Developer’s Eye Vol.11 Untitled Goose Game

Developer's Eye 開発者の視点

暴力を使わずに、いたずらだけで面白さを作る

■ ゲーム概要

Untitled Goose Game

  • 開発:House House
  • ジャンル:スラップスティック・ステルス・サンドボックス
  • プレイ時間:3〜5時間
  • 特徴:暴力的な手段を一切使わず、いたずらだけで村人たちを困らせていく一人称視点ならぬ”一羽称視点”のステルスゲーム
  • 開発エンジン:未確認(推定Unity)。本記事執筆時点で、開発元House House自身が使用エンジンを明言している一次情報は確認できていません。ローポリ・単色塗りの3Dモデルという表現手法から一般的なゲームエンジンでの制作と推測されますが、断定は避けています。

■ 購入先・プレイ環境(2026年7月4日時点)

販売先リンク
Steamstore.steampowered.com/app/837470
Microsoft Store(Xbox / PC)xbox.com/ja-JP/…/untitled-goose-game

Xbox Game Pass:現在は対象外 Xbox公式ストアページでは「Cloud playable with Xbox Game Pass Essential, Premium or Ultimate. Game purchase required.」と表示されており、購入が必要です。2019年12月の発売時にGame Pass対象として同時収録された実績がありますが、本日時点では対象外です。

■ 公式PV

House House公式サイト(goose.game)またはPanic社の配信チャンネルに掲載されている公式トレーラーを、掲載前にご確認の上ご使用ください(本記事執筆時点で一次サイトへの直接埋め込みIDまでは確認できていません)。

■ 開発者が注目した”一点突破の面白さ”

セットアップとパンチライン。暴力を取り除くことで、状況そのものをジョークとして成立させた。

House Houseのメンバー Jake Strasser氏はWikipediaに引用されたコメントで、Untitled Goose Gameの構造を「セットアップとパンチラインがある」と表現している。暴力を取り除くことで、その状況をただのジョークとして存在させられたのだという。

■ その面白さを開発者視点で分解する

● ① スラップスティックの”あるある”リストから逆算する

House Houseのメンバー Nico Disseldorp氏はGame Developer(旧Gamasutra)の「Road to the IGF」インタビューで、個別のギミックの多くは、事前に書き出しておいたスラップスティックの定番ネタのリストから拾い上げて作られたと説明している。「誰かの眼鏡を盗んで地面を手探りさせる」といった定番ネタを、状況ごとに当てはめていったという。

● ② ステルスゲームの型を、いたずらのために借りる

Disseldorp氏は同インタビューで、キャラクターの視界を制限したり、”何かに気づいた”状態と”ガチョウを発見した”状態を分けて管理するなど、ステルスゲームの定石を数多く取り入れたと述べている。ただし目的は隠れることではなく、あえて騒ぎを起こして注目を集めることに置き換えられている。

● ③ 暴力を避けることで生まれる”安全ないたずら”

Disseldorp氏は、ゲームの魅力の大きな部分は、ガチョウがそれほど”悪い”存在ではないことにあると分析している。GTAのような実際の暴力表現があるゲームでは、誰かを驚かせる行為の反応が重すぎて居心地が悪くなることがあるが、Untitled Goose Gameでは誰も傷つかないため、安心していたずらを楽しめるという。

● ④ ストック写真からゲームが生まれた経緯

Wikipediaの記述によれば、企画の出発点は社内チャットに投稿された1枚のガチョウのストック写真だった。ニッチすぎる、労力に見合わないかもしれないと当初は懸念していたチームが、最終的に本作を主要プロジェクトとして選んだ経緯も記録されている。

■ 設計思想の推測(開発者視点)

検証できる発言から見えてくる House House の設計思想は、次のように整理できる。

  • 既存ジャンルの型を、テーマに合わせて転用する:ステルスゲームの仕組みを”隠れる”ためでなく”目立つ”ために使う
  • 暴力を取り除いて安全ないたずらにする:加害性を薄めることで、プレイヤーが罪悪感なく楽しめる領域を作る
  • 定番ネタのリストを制作の道具にする:ゼロから発想するのではなく、蓄積したアイデアのストックから状況に合うものを選ぶ

■ 制作に応用できるポイント(Unity/Unreal で再現する場合の構造案も)

● ① ギミックのアイデアを事前にリスト化しておく

コメディ・いたずら要素のあるゲームを作る場合、個別の演出を思いつくたびに実装するのではなく、事前にアイデアを書き出したリストを用意し、エリアやシチュエーションに合わせて選んで当てはめる進め方が効率的。

● ② 既存ジャンルの仕組みを目的だけ入れ替えて使う

ステルス、パズル、リズムゲームなど確立されたジャンルの仕組みは、目的(隠れる・解く・タイミングを合わせる)を入れ替えるだけで新しい体験に転用できる。実装コストを抑えながら独自性を出したい場合に有効な発想法。

● ③ “加害性”の強さを意図的にコントロールする

いたずら・対立を扱うゲームでは、暴力表現の強さがプレイヤーの心理的な抵抗感に直結する。ターゲット層に合わせて、加害性をどこまで弱めるか(あるいは強めるか)を意図的に設計判断として扱う。

■ まとめ:このゲームは”作り手の教材”である

Untitled Goose Game は、「暴力を取り除く」という引き算の判断によって、いたずらというテーマを誰もが安心して楽しめる体験に変えたゲームだ。ステルスゲームの型を目的だけ入れ替えて転用する発想と、事前に用意したスラップスティックのアイデアリストを活用する制作手法は、限られたリソースで独自性のある体験を作りたい開発者にとって参考になる。

■ 参考文献(一次情報)

■ 著作権表記

© House House / Panic / Untitled Goose Game
本記事内の開発者コメントは上記一次情報を要約・翻訳したものであり、逐語引用は最小限(15語未満・出典1件につき1箇所まで)に留めています。

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