ルールそのものを操作する、パズルの再発明
■ ゲーム概要
Baba Is You
- 開発:Arvi Teikari(Hempuli Oy)
- ジャンル:パズルゲーム
- プレイ時間:10〜20時間
- 特徴:「BABA IS YOU」のようなルールの文が、そのままフィールド上の動かせるブロックになっており、文を組み替えることでゲームのルール自体を書き換えられる
- 開発エンジン:Multimedia Fusion 2(Clickteam製のゲーム制作ツール。ルールを解釈する部分にはLuaスクリプトを併用し、開発者は友人Lukas Meller氏からプラグインの紹介と使い方の指導を受けた)
■ 購入先・プレイ環境(2026年7月4日時点)
| 販売先 | リンク |
|---|---|
| Steam | store.steampowered.com/app/736260 |
対応機種:SteamのWindows/macOS/Linux版とNintendo Switch版を確認できます。配信先やGame Passの対象は変わるため、利用前に各ストアで確認してください。
■ 公式PV
公式トレーラーはSteamストアページで見ることができます。
■ 開発者が注目した”一点突破の面白さ”
パズルで満足感を覚えることが多いのは、単純だが考え込む状況で、一つの仕掛けに気づく瞬間だ。
開発者 Arvi Teikari(Hempuli)氏はGame Developerの2018年のインタビューで、このような発見がパズルゲームで満足感を覚える瞬間だと語っている。
■ その面白さを開発者視点で分解する
● ① ゲームジャムの48時間で核となるルールが生まれた
Teikari氏はGame Pilgrimの取材で、2017年のNordic Game Jamに参加し、48時間でBaba Is Youの原型を制作したと振り返っている。ゲーム内の言葉を動かしてルールを書き換えるパズルの発想は、この短い制作期間から生まれた。
● ② オブジェクトに”初期設定の性質”を持たせない
Wikipediaによれば、Teikari氏は当初「氷は溶ける」のような各オブジェクトの固有性質を用意し、それを”NOT”で打ち消す仕組みを考えていた。しかし最終的には、多くのオブジェクトの性質を画面上のルールで変えられる設計へと発展させた。
● ③ レベルを”逆算”で作る
Game Pilgrimのインタビューで Teikari氏は、レベル制作のプロセスを「逆向き」で行っていると説明している。まずルール同士の面白い相互作用のアイデアを考え、そのあとでそのギミックを使わないと解けないレベルを設計するという順序だ。この手法は柔軟なルールシステムだからこそ機能したという。
● ④ 難易度調整の難しさと向き合う
Red Bull Gamesのインタビューで Teikari氏は、行動ベースのゲームでは難易度調整の手段(ダメージ量やゲーム速度の変更など)が豊富にあるのに対し、ターン制パズルゲームではそうした調整弁が少なく、難易度調整は技術的にも複雑になりがちだと語っている。ヒントシステムの導入を検討しつつも、文章ではなく画像的なヒントにしたいというこだわりも明かしている。
■ 設計思想の推測(開発者視点)
検証できる発言から見えてくる Arvi Teikari氏の設計思想は、次のように整理できる。
- ジャムの制約を”完成された発想”として扱う:48時間の試作を約2年かけて改良・拡張する
- 初期設定をできるだけ持たせない:オブジェクトの多くの性質を画面上のルールで決める
- ゴールから逆算して作る:面白い相互作用を先に決め、それを要求するレベルを後から設計する
■ 制作に応用できるポイント(Unityで再現する場合の構造案も)
● ① ルールをデータとして扱う設計にする
Unityでルールベースのパズルを作る場合、オブジェクトの挙動を個別スクリプトに直書きするのではなく、「主語・動詞・性質」の組み合わせをデータ(ScriptableObjectなど)として管理し、実行時に評価する設計にすると、Baba Is You的な”ルールの書き換え”に近づけられる。
● ② 面白い相互作用から逆算してレベルを作る
パズルゲームのレベルデザインでは、先にギミックの組み合わせの面白さを見つけ、それを要求するレベルを後付けする順序が有効な場合がある。プロトタイプ段階で自由に遊べる”サンドボックス”を用意し、そこから面白い発見を拾い上げる進め方は個人開発でも再現しやすい。
● ③ 難易度調整の手段を早い段階で設計しておく
パズルゲームは行動ベースのゲームに比べて難易度調整の手段が少ない。ヒントシステムやチェックポイントなど、難易度調整の仕組みを企画の早い段階から検討しておくと、後からの追加がしやすくなる。
■ まとめ:このゲームは”作り手の教材”である
Baba Is You は、画面上の言葉を動かしてルールそのものを書き換える仕組みを特徴とするゲームだ。48時間のゲームジャムという制約の中で生まれた発想を、何年もかけて丁寧に拡張していった過程は、小さなアイデアを育てる開発の好例と言える。
■ 参考文献
- Arvi Teikari Interview, Road to the IGF: Hempuli Oy’s Baba Is You, Game Developer
- Arvi Teikari Interview, “Designing Baba is You’s delightfully innovative rule-writing system”, Game Developer
- Arvi Teikari Interview, Game Pilgrim
- Arvi Teikari Interview, Red Bull Games
- Baba Is You – Wikipedia(開発経緯について)
■ 著作権表記
© Hempuli Oy / Baba Is You
本記事内の開発者コメントは掲載した取材記事などを要約・翻訳したものであり、逐語引用は最小限(15語未満・出典1件につき1箇所まで)に留めています。
