実践ガイド

Developer’s Eye Vol.3 Disco Elysium

Disco Elysium — 戦闘を捨てたRPGが成立する理由

■ 1. ゲーム概要

Disco Elysium: The Final Cut

  • 開発:ZA/UM
  • ジャンル:会話型RPG
  • プレイ時間:20〜40時間
  • 特徴:専用の戦闘システムを持たず、24種類のスキル(人格)との対話と選択でゲームが成立する構造
  • 開発エンジン:Unity(油絵調のビジュアルをUnity上に構築)

■ 購入先・プレイ環境(2026年7月4日時点)

販売先リンク
Steamstore.steampowered.com/app/632470
Microsoft Store(Xbox / PC)xbox.com/ja-jp/…/disco-elysium

Xbox Game Pass:対象作品・対応プラン・価格は変わるため、購入や加入の前にXbox公式ストアで最新の表示を確認してください。

■ 公式PV

■ 2. 開発者が注目した”一点突破の面白さ”

スキルが数値ではなく、頭の中で発言する”人格”として実装されている。

主人公は記憶を失った刑事。物語が進むにつれて、論理・共感・内臓感覚・意志力といった24種のスキルが、それぞれ独立した人格のようにプレイヤーに話しかけてくる。リードデザイナー Robert Kurvitz はこの仕組みを、主人公の体の中で24人がパーティーを開いているようなもので、ポイント配分によってどの人格に発言力を持たせるか投票しているようなものだと表現している(Steam公式ニュース掲載の海外メディアインタビューより)。

■ 3. その面白さを開発者視点で分解する

● ① 数値ではなく”声”としてのスキル設計

Disco Elysium では数値による判定に加え、スキルが人格のように振る舞う。Disco Elysium ではスキルが会話に割り込み、時には主人公に無茶な行動を促してくる。例えば「持久力(Endurance)」のようなスキルが、腹の底から下品な口調でプレイヤーを煽ってくる場面がある、とメディアの体験記でも紹介されている(Steam公式ニュース掲載インタビュー内の記者コメントより)。数値の裏に人格を宿すことで、キャラクターメイクそのものが「自分の中の声のパワーバランスを決める行為」に変わっている。

● ② UIデザイン自体が会話のテンポを作る

会話UIの縦長の表示はTwitterのタイムラインから着想を得たと、GameSpot の取材で紹介されている。

● ③ 「間違えること」自体をゲーム性にする

Kurvitz は Canard PC のインタビューで、判定に失敗することがむしろゲームを面白くするという趣旨のコメントを残している。実際、多くのスキルチェックでは失敗も別の展開につながるが、健康や士気を失いゲームオーバーになる場合もある。

● ④ 戦闘を実装しないという設計判断

Disco Elysium には専用の戦闘システムがなく、対立を会話やスキルチェックで扱う場面が多い。探索や道具を使う場面も含め、対話と推理を中心に構成されている。

■ 4. 設計思想の推測(開発者視点)

検証できる発言から見えてくる ZA/UM の設計思想は、次のように整理できる。

  • 数値を人格に変換する:ステータスは「強さ」ではなく「頭の中の声の発言力」として扱う
  • UIそのものにテンポ設計を持ち込む:会話UIの見た目や情報密度が、そのままゲームのリズムを作る
  • 失敗を物語の一部にする:判定失敗を別の展開につなげる設計も検討する。ただし、失敗でゲームオーバーになる場面もある
  • 戦闘の必要性を疑う:ジャンルの慣習を無条件に採用せず、体験の核(対話と推理)に不要な要素は削る

■ 5. 制作に応用できるポイント(システムと世界観の統合)

● ① ステータスやスキルに”口調”を持たせる

Unityで実装する場合、スキル判定の成否だけでなく、スキルごとに固有のセリフパターン・口調(丁寧/挑発的/不安げ、など)を用意し、会話システムに割り込ませる設計にすると、Disco Elysium的な「数値が人格になる」感覚に近づけられる。

● ② UIの情報密度そのものを演出として設計する

会話テンポやUIのレイアウトは装飾ではなく、体験のリズムを決める要素として扱う。テキスト量、表示速度、選択肢の見せ方を意図的に設計すると、システムと雰囲気を分離させずに作れる。

● ③ 「戦闘は本当に必要か」を問い直す

小規模開発では特に、体験の核(このゲームで一番面白い部分は何か)を明確にし、それ以外の要素——戦闘、探索、収集など——が本当に必要かを検討する価値がある。必要な要素を絞ることで作品の特色を際立たせる、一つの例といえる。

■ 6. まとめ:このゲームは”作り手の教材”である

Disco Elysium は、対話と推理を中心に、スキルを人格のように表現するRPGだ。UI設計・会話設計・失敗の扱い方まで含め、システムと世界観を分離しないという一貫した姿勢が、このゲームを唯一無二にしている。

■ 参考文献

■ 著作権表記

© ZA/UM / Disco Elysium
本記事内の開発者コメントは上記一次情報を要約・翻訳したものであり、逐語引用は最小限(15語未満・出典1件につき1箇所まで)に留めています。
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