ルールそのものを操作する、パズルの再発明
■ ゲーム概要
Baba Is You
- 開発:Arvi Teikari(Hempuli Oy)
- ジャンル:パズルゲーム
- プレイ時間:10〜20時間
- 特徴:「BABA IS YOU」のようなルールの文が、そのままフィールド上の動かせるブロックになっており、文を組み替えることでゲームのルール自体を書き換えられる
- 開発エンジン:Multimedia Fusion 2(Clickteam製のゲーム制作ツール。ルールを解釈する部分にはLuaスクリプトを併用し、開発者の友人Lukas Meller氏が実装を手伝った)
■ 購入先・プレイ環境(2026年7月4日時点)
| 販売先 | リンク |
|---|---|
| Steam | store.steampowered.com/app/736260 |
Xbox版:なし Baba Is YouはXbox向けにリリースされておらず、Microsoft StoreにもGame Passにも存在しません。対応プラットフォームはWindows/macOS/Linux(Steam)とNintendo Switch、iOS/Androidです。
■ 公式PV
公式サイト(hempuli.com/baba)およびSteamストアページに掲載されている公式トレーラーをご確認の上、掲載してください(開発者本人が管理するYouTubeチャンネルの動画のため、他記事と同じ形式でのURL直接掲載は本記事執筆時点では見送っています)。
■ 開発者が注目した”一点突破の面白さ”
もっとも満足感のあるパズルの瞬間は、シンプルだが頭を抱えるような状況を提示し、そこにたった一つの気づきを見出させることだ。
開発者 Arvi Teikari(Hempuli)氏はWikipediaに引用されたコメントで、パズルゲームにおける満足感の正体をこう説明している。Baba Is Youのルールは、この”一つの気づき”を作るために設計されている。
■ その面白さを開発者視点で分解する
● ① ゲームジャムの48時間で核となるルールが生まれた
Teikari氏はGame Developer(旧Gamasutra)のインタビューで、Baba Is Youの綱引き型の勝利条件、生け贄システム、レーン式の戦闘——といった中核設計のほとんどが、Nordic Game Jam 2017の48時間の制作期間中にほぼ無計画で作られたと明かしている。過去に多くのカードゲームに触れてきた経験から、何が面白いかの直感が働いたのだという。
● ② オブジェクトに”初期設定の性質”を持たせない
Wikipediaによれば、Teikari氏は当初「氷は溶ける」のような各オブジェクトの固有性質を用意し、それを”NOT”で打ち消す仕組みを考えていた。しかし最終的には、オブジェクトには一切の初期性質を持たせず、すべての挙動をルールの記述だけで決める設計の方が面白くなると判断している。
● ③ レベルを”逆算”で作る
Game Pilgrimのインタビューで Teikari氏は、レベル制作のプロセスを「逆向き」で行っていると説明している。まずルール同士の面白い相互作用のアイデアを考え、そのあとでそのギミックを使わないと解けないレベルを設計するという順序だ。この手法は柔軟なルールシステムだからこそ機能したという。
● ④ 難易度調整の難しさと向き合う
Red Bull Gamesのインタビューで Teikari氏は、行動ベースのゲームでは難易度調整の手段(ダメージ量やゲーム速度の変更など)が豊富にあるのに対し、ターン制パズルゲームではそうした調整弁が少なく、難易度調整は技術的にも複雑になりがちだと語っている。ヒントシステムの導入を検討しつつも、文章ではなく画像的なヒントにしたいというこだわりも明かしている。
■ 設計思想の推測(開発者視点)
検証できる発言から見えてくる Arvi Teikari氏の設計思想は、次のように整理できる。
- ジャムの制約を”完成された発想”として扱う:48時間で生まれた核を、そのまま何年もかけて拡張する
- 初期設定をできるだけ持たせない:オブジェクトに固定的な性質を与えず、ルール記述だけで全てを決める
- ゴールから逆算して作る:面白い相互作用を先に決め、それを要求するレベルを後から設計する
■ 制作に応用できるポイント(Unityで再現する場合の構造案も)
● ① ルールをデータとして扱う設計にする
Unityでルールベースのパズルを作る場合、オブジェクトの挙動を個別スクリプトに直書きするのではなく、「主語・動詞・性質」の組み合わせをデータ(ScriptableObjectなど)として管理し、実行時に評価する設計にすると、Baba Is You的な”ルールの書き換え”に近づけられる。
● ② 面白い相互作用から逆算してレベルを作る
パズルゲームのレベルデザインでは、先にギミックの組み合わせの面白さを見つけ、それを要求するレベルを後付けする順序が有効な場合がある。プロトタイプ段階で自由に遊べる”サンドボックス”を用意し、そこから面白い発見を拾い上げる進め方は個人開発でも再現しやすい。
● ③ 難易度調整の手段を早い段階で設計しておく
パズルゲームは行動ベースのゲームに比べて難易度調整の手段が少ない。ヒントシステムやチェックポイントなど、難易度調整の仕組みを企画の早い段階から検討しておくと、後からの追加がしやすくなる。
■ まとめ:このゲームは”作り手の教材”である
Baba Is You は、「オブジェクトに固定的な性質を持たせない」という一つの割り切りが、ルールそのものを操作するという新しいパズルジャンルを生んだゲームだ。48時間のゲームジャムという制約の中で生まれた発想を、何年もかけて丁寧に拡張していった過程は、小さなアイデアを育てる開発の好例と言える。
■ 参考文献(一次情報)
- Arvi Teikari Interview, “Designing Baba is You’s delightfully innovative rule-writing system”, Game Developer
- Arvi Teikari Interview, Game Pilgrim
- Arvi Teikari Interview, Red Bull Games
- Baba Is You – Wikipedia(開発経緯について)
■ 著作権表記
© Hempuli Oy / Baba Is You
本記事内の開発者コメントは上記一次情報を要約・翻訳したものであり、逐語引用は最小限(15語未満・出典1件につき1箇所まで)に留めています。


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