Developer’s Eye Vol.8 The Witness

Developer's Eye 開発者の視点

一言も説明せずに、プレイヤーに「わかった!」を作らせる設計

■ 1. ゲーム概要

The Witness

  • 開発:Thekla, Inc.
  • ジャンル:一人称パズル探索ゲーム
  • プレイ時間:クリアまで40〜80時間
  • 特徴:言葉による説明を一切使わず、線を引くだけの単純な操作から、島全体を巻き込む多層的なパズルへと発展していくゲーム
  • 開発エンジン:自社製カスタムエンジン(C++で構築。開発中にJonathan Blow氏はC++への不満から独自プログラミング言語「Jai」の開発を始め、本作完成後に本格着手した)

■ 購入先・プレイ環境(2026年7月4日時点)

販売先リンク
Steamstore.steampowered.com/app/210970
Microsoft Store(Xbox / PC)xbox.com/ja-JP/…/the-witness

Xbox Game Pass:対象外 Xbox公式ストアページ(日本版、価格¥4,399)にGame Pass関連の表示は見当たらず、購入が必要なタイトルです。

■ 公式PV

■ 2. 開発者が注目した”一点突破の面白さ”

ひらめきの感覚を、丁寧にモデル化する。

Jonathan Blow氏はGamasutra(現Game Developer)のインタビューで、The Witnessについて「ひらめきの感覚を丁寧にモデル化したゲームだ」と語っている。パズルの題材は現実世界で起きていることと同じ種類のものだが、より単純化されている——だからこそ、プレイヤーが得るひらめきには、現実世界とのかすかな繋がりがあるのだという。

■ 3. その面白さを開発者視点で分解する

● ① 言葉で説明すると”ひらめき”が死ぬ

Wikipediaの記述によれば、Blow氏は新しい要素を導入した際にすぐ言葉で説明してしまうことは「ひらめきや発見の喜びを殺す」と考え、意図的に”過剰なチュートリアル化”を避けたという。かわりに、パズル自体がプレイヤーにルールを教える構造にした。

● ② “アンチ任天堂”という自己規定

Blow氏は同記事で、自身のゲームを「アンチ任天堂」と表現している。任天堂のゲームには当たり前のことを何度も繰り返し説明するキャラクターがいるが、The Witnessは逆方向を向いている——何も教えてくれなかった初代『ゼルダの伝説』に近い、という説明をしている。

● ③ 挑戦する人に応える。全員に応えようとはしない

「一部のプレイヤーが難しさゆえにクリアできないとしたら」という質問に対し、Blow氏は、より多くの人が”すべてクリアできた”と感じられるように内容を薄めるよりも、挑戦を好むプレイヤーに応えられるゲームを作りたいと答えている。難易度を下げて間口を広げることを、意図的に選ばなかったことがわかる。

● ④ C++への不満から、自作言語の開発へ

Wikipediaによれば、The Witnessの開発中、Blow氏は使用言語であるC++に強い不満を持つようになり、新しいプログラミング言語(コードネーム”Jai”)の設計・開発を始めている。本作の完成後、この言語と、それを使った新しいゲームエンジンの開発に本格的に取り組むようになった。既存のツールに満足できなければ、道具そのものを作り直すという姿勢の表れと言える。

■ 4. 設計思想の推測(開発者視点)

検証できる発言から見えてくる Jonathan Blow氏の設計思想は、次のように整理できる。

  • 言葉を使わずに理解させる:ルール説明はテキストではなく、パズルの構造そのものに埋め込む
  • 難易度を”間口の広さ”のために妥協しない:挑戦したい人に応えることを優先し、全員が完走できることを目的にしない
  • 現実との”かすかな繋がり”を保つ:パズルの題材は現実の現象を単純化したものにし、ひらめきに実感を持たせる
  • ツールに満足できなければ作り直す:既存の言語やエンジンの限界を感じたら、それ自体を設計し直す

■ 5. 制作に応用できるポイント(Unity/Godot で再現する場合の構造案も)

● ① チュートリアルをテキストではなく”最初の数問”に埋め込む

新しい仕組みを導入する際、テキストで説明する代わりに、絶対に間違えようがないほど単純な最初の1〜2問でルールを体感させる設計は、パズルゲーム・謎解き要素のあるゲーム全般に応用できる。Unity/Godotどちらでも、チュートリアル専用のレベルを”最も易しい本編の一部”として設計すると近づけやすい。

● ② 難易度のターゲットを明確に決める

「全員がクリアできること」と「挑戦したい人に応えること」は両立しないことが多い。開発の早い段階でどちらを優先するかを決めておくと、レベルデザインやヒント設計の判断がぶれにくくなる。

● ③ 同じ操作ルールを、題材を変えて反復する

The Witnessは”線を引く”という単一の操作を保ったまま、光・影・音・反射など題材だけを変えて多様なパズルを生み出している。小規模開発でも、操作系を増やさずに題材のバリエーションで奥行きを出す発想は再現しやすい。

■ 6. まとめ:このゲームは”作り手の教材”である

The Witness は、「言葉を一切使わずに、プレイヤー自身に”わかった”という体験をさせる」という設計に、開発期間のすべてを注いだゲームだ。難易度を妥協しない判断、チュートリアルを言葉ではなく構造に埋め込む手法、そして道具(プログラミング言語)そのものを作り直す徹底ぶりまで、一貫して「ひらめきの質」にこだわり抜いた結果生まれた作品と言える。

■ 参考文献(一次情報)

■ 著作権表記

© Thekla, Inc. / The Witness
本記事内の開発者コメントは上記一次情報を要約・翻訳したものであり、逐語引用は最小限(15語未満・出典1件につき1箇所まで)に留めています。

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