移動の気持ちよさだけに集中した、個人開発の哲学
■ ゲーム概要
A Short Hike
- 開発:Adam Robinson-Yu(adamgryu)
- ジャンル:小さなオープンワールド探索ゲーム
- プレイ時間:2〜4時間
- 特徴:携帯電話の電波を探して山を登る、それだけのシンプルな目的の中に、寄り道したくなる仕掛けを詰め込んだ個人開発ゲーム
- 開発エンジン:Unity(Unity標準のTerrain Editorで地形を作成し、Cinemachineでカメラワーク、Yarn Spinnerで会話木、InControlでコントローラー対応を実装)
■ 購入先・プレイ環境(2026年7月4日時点)
| 販売先 | リンク |
|---|---|
| Steam | store.steampowered.com/app/1055540 |
| Microsoft Store(Xbox / PC) | xbox.com/ja-jp/…/a-short-hike |
Xbox Game Pass:現在は対象外 Xbox公式ストアページ(日本版)では「Xbox Game Pass Essential、Premium、または Ultimate でクラウド プレイ可能です。ゲームの購入が必要です。」と表示されており、購入が必要です。2023年にGame Passへ追加された実績がありますが、本日時点では対象外です。
■ 公式PV
開発者Adam Robinson-Yu氏自身のチャンネルに掲載されているトレーラーで、公式サイト(ashorthike.com)およびSteamのウィッシュリストへのリンクが説明欄に記載されています。
■ 開発者が注目した”一点突破の面白さ”
現実にはできない規模と多様さの探索を、ビデオゲームなら実現できる。
開発者 Adam Robinson-Yu氏はGame Developer(旧Gamasutra)の「Road to the IGF」インタビューで、探索というテーマの魅力についてこう語っている。自室の窓が煉瓦壁に面していて自然に触れる機会が少なかったという実体験も、自然の中の平穏さをゲームで再現したいという動機につながったという。
■ その面白さを開発者視点で分解する
● ① プレイヤー移動の作り込みから始まり、そこにミニゲームを足す
Robinson-Yu氏は同インタビューで、パルクール的な競争要素や釣りといった要素は、時間をかけて作り込んだプレイヤーの移動そのものから、もっとゲーム性を引き出すために追加したと説明している。釣りについては「ずっと作ってみたかったから」という個人的な動機も明かしている。
● ② 燃え尽きからの回避として生まれた企画
MCV/DEVELOPの取材によれば、A Short Hikeは元々進めていた別のRPGプロジェクトで行き詰まりを感じたRobinson-Yu氏が、息抜きとして始めた小さなプロジェクトだった。実際に友人たちと国立公園を旅したハイキング体験から着想を得ている。
● ③ Animal CrossingとBreath of the Wildからの意識的な借用
Canadian Game Devsのインタビューで Robinson-Yu氏は、Animal Crossingの穏やかで思いやりのある雰囲気を借りたいと考えつつ、地面のひび割れや魚の影といった視覚的なインタラクション表現も参考にしたと語っている。一方で似すぎることへの懸念から、当初は魚の影を入れることをためらっていたが、それがないと釣り要素に気づいてもらえないという理由で最終的に採用したという。
● ④ 4ヶ月という短い開発期間とスコープ管理
Canadian Game Devsのインタビューで、Humble Monthlyでのリリースを約束したことで生じた厳しいスケジュールの中、コアとなるゲームプレイを”シンプルで到達しやすい”ものに設計したことがスコープ管理に役立ったと振り返っている。
■ 設計思想の推測(開発者視点)
検証できる発言から見えてくる Adam Robinson-Yu氏の設計思想は、次のように整理できる。
- 移動そのものを最優先で磨く:他の要素より先に「動く気持ちよさ」を作り込み、そこから追加要素を発想する
- 似すぎることを恐れず、必要な引用は取り入れる:インスピレーション元との類似を気にしすぎず、機能上必要なら思い切って採用する
- コアループをシンプルにしてスコープを守る:短期間の開発では、複雑な仕組みより単純で確実に完成できる核を選ぶ
■ 制作に応用できるポイント(Unityで再現する場合の構造案も)
● ① 移動を作り込んでから、それを活かすミニゲームを考える
Unityでキャラクター移動を実装する際、まず”動くこと自体が楽しいか”を検証してから、その移動を使ったミニゲーム(パルクール、タイムアタックなど)を追加する順序は、リソースの少ない個人開発に向いている。
● ② 息抜きプロジェクトを”完成させる”前提で始める
大きなプロジェクトで行き詰まった際、短期間で完成できる規模の別プロジェクトに切り替える判断は、モチベーション維持の手段として有効。最初から「小さく完成させる」ことを目標に設計する。
● ③ 既存の名作からの引用は機能面で判断する
見た目の類似を気にしすぎるより、「その表現がないとプレイヤーが仕組みに気づけないか」という機能面で引用の要否を判断すると、オリジナリティと分かりやすさのバランスが取りやすい。
■ まとめ:このゲームは”作り手の教材”である
A Short Hike は、「移動そのものを磨く」ことを最優先にした個人開発が、短期間で高い完成度に到達した好例だ。行き詰まりからの息抜きとして始まったプロジェクトを、明確なスコープ管理と、インスピレーション元からの機能的な引用によって完成させたプロセスは、小規模開発者にとって実践的な指針になる。
■ 参考文献(一次情報)
- Adam Robinson-Yu Interview, “Road to the IGF: Adam Robinson-Yu’s A Short Hike”, Game Developer
- Adam Robinson-Yu Interview, MCV/DEVELOP
- Adam Robinson-Yu Interview, Canadian Game Devs
- A Short Hike – Wikipedia(開発経緯・技術について)
■ 著作権表記
© adamgryu / A Short Hike
本記事内の開発者コメントは上記一次情報を要約・翻訳したものであり、逐語引用は最小限(15語未満・出典1件につき1箇所まで)に留めています。


コメント