はじめに:「何から作り始めるか」で完成率が変わる
Unityでゲームを作り始めたとき、多くの初心者がこんな状況に陥ります。
「タイトル画面を先に作り込んで満足してしまった」 「グラフィックを用意しているうちに飽きた」 「あれもこれも同時に作ろうとして収拾がつかなくなった」
実は、ゲームの完成率は「何から作り始めるか」の順番で大きく変わります。
当サイトの既存記事「個人ゲーム開発で挫折しないための実装の進め方」では、「コアから実装する」という原則をお伝えしました。この記事ではその考え方をさらに具体化し、ジャンル別に「何をどの順番で実装するか」を初心者向けに解説します。
実装順序の基本原則:なぜコアから作るのか
どのジャンルでも共通する実装の基本原則は「コア(核となる遊び)から作る」です。
なぜコアから作るのか。それは、「面白いかどうか」を早い段階で確認するためです。
グラフィックや演出から作り始めてしまうと、最終的にゲームとして遊んでみたときに「あれ、あんまり面白くない…」と気づいたとき、それまでの作業がすべて無駄になってしまいます。
コアが面白いと確認できてから装飾を追加していけば、無駄な作業が減り、完成までの最短ルートを歩めます。
全ジャンル共通の実装順序
① コアの実装(図形・仮素材でOK)
↓
② 自分でテストプレイして面白さを確認
↓
③ ゲームオーバー・クリア処理の実装
↓
④ UI(スコア・HP表示など)の実装
↓
⑤ タイトル画面・ゲームオーバー画面の実装
↓
⑥ グラフィック・BGM・効果音の差し替え
↓
⑦ 難易度調整・ステージ追加(MVP完成後)
この順番を守ることが、ジャンルを問わず最も重要なルールです。
パズルゲームの実装順序
コアとは何か
パズルゲームのコアは「ルールに従ってオブジェクトを操作し、条件を満たす」仕組みです。見た目より「ルールが正しく動くか」を最優先に実装します。
実装ステップ
STEP 1:グリッドまたはゲームボードの生成
まずゲームの「場」を作ります。パズルゲームは多くの場合、グリッド(格子状のマス目)上で動作します。
// 例:5×5のグリッドをスクリプトで生成する
public class GridManager : MonoBehaviour
{
public int width = 5;
public int height = 5;
public GameObject cellPrefab; // マス目のプレハブ
void Start()
{
for (int x = 0; x < width; x++)
{
for (int y = 0; y < height; y++)
{
Instantiate(cellPrefab, new Vector3(x, y, 0), Quaternion.identity);
}
}
}
}
最初はセル(マス目)を白い四角形で作っても構いません。
STEP 2:プレイヤーの操作(オブジェクトを動かす)
クリック・タップ・キー入力でオブジェクトを動かせるようにします。
STEP 3:ルール判定の実装
「同じ色が3つ並んだら消える」「ブロックがゴールに到達したらクリア」など、ゲームのルールをスクリプトで実装します。これがパズルゲームの「心臓部」です。
STEP 4:クリア・ゲームオーバー判定
ルールが動いたら、勝敗の判定を実装します。
STEP 5:スコア・残り手数の表示(UI)
TextMeshProを使ってスコアや残り手数をCanvas上に表示します。
STEP 6:演出・グラフィック差し替え
コアが面白いと確認できたら、アニメーション・エフェクト・BGMを追加します。
参考チュートリアル
クリッカー/放置ゲームの実装順序
コアとは何か
クリッカーゲームのコアは「クリックで数字が増える」だけです。このシンプルさが最大の武器です。
実装ステップ
STEP 1:スコア変数とクリック処理
Canvasにボタンを1つ配置し、クリックするとスコアが増えるスクリプトを書きます。
public class ClickerGame : MonoBehaviour
{
public int score = 0;
public TMPro.TextMeshProUGUI scoreText;
public void OnClickButton()
{
score++;
scoreText.text = "スコア: " + score;
}
}
STEP 2:自動増加(放置要素)の実装
時間経過でスコアが増える仕組みを追加します。
void Update()
{
score += autoClickPerSecond * Time.deltaTime;
scoreText.text = "スコア: " + Mathf.FloorToInt(score);
}
STEP 3:アップグレードボタンの実装
スコアを消費してクリック効率や自動増加量を上げる「アップグレード」を追加します。
STEP 4:セーブ機能の実装
ゲームを閉じても進捗が保存されるよう、PlayerPrefsでデータを保存します。
// 保存
PlayerPrefs.SetInt("score", score);
PlayerPrefs.Save();
// 読み込み
score = PlayerPrefs.GetInt("score", 0);
STEP 5:UI・演出の整備
ボタンのデザイン・数字のアニメーション・BGMを追加します。
ポイント
クリッカーゲームはHTMLでも作れますが、Unityで作るとスマホアプリとして配布できるのが大きなメリットです。Unity 6のWebビルド機能を使えばブラウザ版も公開できます。
横スクロールアクションの実装順序
コアとは何か
横スクロールアクションのコアは「キャラクターが移動・ジャンプして障害物を避ける」仕組みです。
実装ステップ
STEP 1:プレイヤーオブジェクトの作成と移動
SpriteRendererとRigidbody2Dをアタッチした四角形(仮キャラ)を配置し、左右移動スクリプトを書きます。
public class PlayerController : MonoBehaviour
{
public float moveSpeed = 5f;
public float jumpForce = 10f;
private Rigidbody2D rb;
void Start()
{
rb = GetComponent<Rigidbody2D>();
}
void Update()
{
float moveInput = Input.GetAxis("Horizontal");
rb.linearVelocity = new Vector2(moveInput * moveSpeed, rb.linearVelocity.y);
if (Input.GetButtonDown("Jump") && IsGrounded())
{
rb.AddForce(Vector2.up * jumpForce, ForceMode2D.Impulse);
}
}
}
STEP 2:地面との当たり判定(接地判定)
ジャンプを無限にできないよう、地面に接触しているかを判定するIsGrounded()を実装します。
STEP 3:Tilemapでステージを作る
Unity 6のTilemapエディタを使って床・壁・足場を配置します。Unity 6ではTilemapの編集UIが改善され、直感的にステージを作れるようになっています。
STEP 4:カメラの追従
Cinemachineパッケージ(Package Managerから無料で追加可能)を使うと、数クリックでプレイヤーを追従するカメラが設定できます。
STEP 5:ゲームオーバー・クリア処理
穴に落ちたらゲームオーバー、ゴール地点に到達したらクリアの処理を実装します。
STEP 6:敵キャラクターの追加
コアが動いてから敵を追加します。最初は「一定範囲を往復する」だけのシンプルな敵でOKです。
STEP 7:アニメーション・BGM・効果音
Animator Controllerを使って走り・ジャンプのアニメーションを追加します。
参考チュートリアル
ノベルゲームの実装順序
コアとは何か
ノベルゲームのコアは「テキストが順番に表示され、クリックで次に進む」仕組みです。
Unityでノベルゲームを作る方法は2種類
| 方法 | 概要 | 難易度 |
|---|---|---|
| フルスクラッチ | C#でゼロから自作 | ★★★ |
| アセット活用 | 「Naninovel」などのアセットを使う | ★★☆ |
初心者にはアセット活用をおすすめします。ここでは両方の手順を解説します。
フルスクラッチの実装ステップ
STEP 1:テキスト表示システムの実装
CanvasにTextMeshProを配置し、文字が1文字ずつ表示される「タイプライター演出」を実装します。
IEnumerator TypeText(string text)
{
dialogueText.text = "";
foreach (char c in text)
{
dialogueText.text += c;
yield return new WaitForSeconds(0.05f);
}
}
STEP 2:クリックで次のテキストへ進む処理
配列にセリフデータを格納し、クリックするたびに次のセリフへ進む処理を実装します。
STEP 3:背景画像・立ち絵の表示
Imageコンポーネントを使って背景とキャラクター立ち絵をセリフに合わせて切り替えます。
STEP 4:選択肢システムの実装
Buttonを動的に生成し、選択肢ごとに分岐先のシーンやセリフインデックスを設定します。
STEP 5:BGM・SE・フェード演出
BGMの切り替え、画面フェードイン・フェードアウトを実装します。
アセット活用の場合(Naninovel)
Asset Storeで「Naninovel」(有料)を導入すると、専用のスクリプト言語でシナリオを書くだけでノベルゲームが完成します。フルスクラッチよりはるかに短時間で実装できます。
参考チュートリアル
シューティングゲームの実装順序
コアとは何か
シューティングゲームのコアは「自機が移動し、弾を発射して敵に当てる」仕組みです。
実装ステップ
STEP 1:自機の移動
public class PlayerShip : MonoBehaviour
{
public float speed = 5f;
void Update()
{
float h = Input.GetAxis("Horizontal");
float v = Input.GetAxis("Vertical");
transform.Translate(new Vector3(h, v, 0) * speed * Time.deltaTime);
}
}
STEP 2:弾の発射
Prefab化した弾オブジェクトをスペースキーでInstantiate(生成)し、上方向に飛ばします。
if (Input.GetButtonDown("Jump"))
{
Instantiate(bulletPrefab, transform.position, Quaternion.identity);
}
STEP 3:敵の出現と移動
敵Prefabを一定間隔で画面上部に生成し、下方向へ移動させます。
STEP 4:当たり判定(OnTriggerEnter2D)
弾と敵のCollider2Dを設定し、OnTriggerEnter2Dで衝突を検知します。
void OnTriggerEnter2D(Collider2D other)
{
if (other.CompareTag("Enemy"))
{
Destroy(other.gameObject); // 敵を消す
Destroy(gameObject); // 弾を消す
GameManager.instance.AddScore(100);
}
}
STEP 5:スコア・残機表示(UI)
STEP 6:ゲームオーバー処理
STEP 7:敵の種類・弾パターンの追加
参考チュートリアル
まとめ
今回お伝えしたポイントをおさらいします。
- どのジャンルも「コアから作る」順番は共通
- パズルはグリッド生成→ルール判定→UI→演出の順
- クリッカーはクリック処理→自動増加→アップグレード→セーブの順
- 横スクロールアクションは移動→接地判定→Tilemap→カメラ→ゲームオーバーの順
- ノベルはテキスト表示→クリック送り→背景・立ち絵→選択肢の順
- シューティングは移動→弾発射→敵出現→当たり判定の順
- グラフィック・BGM・演出はコアが面白いと確認してから追加する
次回は「Unityで個人ゲーム開発のタスク管理術」について解説します。挫折しないスケジュールの立て方をお伝えします!
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