はじめに:分析は「パクリ」じゃない
「好きなゲームを参考にしたい。でもパクリになるんじゃないか…」
個人ゲーム開発を始めたばかりの方から、よくこういう声を聞きます。でも安心してください。参考作品(リファレンス)の研究は、ゲームデザインを学ぶ一つの方法です。 分析することは、ゲーム開発において欠かせないプロセスのひとつです。
大切なのは「丸ごとコピーする」のではなく、「面白さの構造を学ぶ」こと。料理でいえば、レシピを見て作り方を学ぶのと同じです。作品の具体的な表現や素材を使う場合は、権利や利用条件も確認しましょう。
この記事では、初心者でも実践できる「参考ゲームの正しい分析方法」をステップごとに解説します。
なぜゲームを分析するのか?
分析をすることで得られるメリットは大きく3つあります。
① 企画力が上がる 「なぜこのゲームは面白いのか」を言語化できるようになると、自分のゲームの企画を立てるときに役立ちます。「面白さの構造」が見えてくるからです。
② 実装の見通しが立つ 「このゲームの動きはどう実装されているのか」を考えることで、自分が作るときの技術的な課題が事前に見えてきます。
③ スコープ感覚が身につく 観察できるルールを整理し、必要な機能や作る範囲(スコープ)を考えられます。
分析の前に:ゲームの選び方
分析するゲームは「好きなゲーム」でも「気になるゲーム」でも構いませんが、最初は以下の条件に合うものを選ぶと学びが大きくなります。
- シンプルなルールのゲーム(操作が少なく、ジャンルが明確なもの)
- 繰り返し遊べるもの(無料作品や、すでに持っている作品など)
- 個人開発またはインディーゲーム(プロの大作より「自分でも作れそう」という視点が持ちやすい)
おすすめの探し場所は以下のとおりです。
ステップ①:まず「何も考えずに」1回プレイする
分析の第一歩は、純粋にプレイヤーとして遊ぶことです。
まず1回、普通のプレイヤーとしてゲームを体験し、感じたことを記録してみてください。
プレイが終わったら、以下の3点を直感で書き留めておきましょう。
- 面白かった瞬間はどこか?
- つまらなかった・ストレスを感じた瞬間はどこか?
- もう一度プレイしたいと思ったか?
この「直感メモ」が、後の分析の出発点になります。
ステップ②:「操作」を数える
2回目のプレイでは、プレイヤーができる操作を全部数えてみましょう。
操作の種類を数えると、プレイヤーに伝える内容を整理しやすくなります。
操作を数える方法
実際にプレイしながら、使ったボタン・キー・タップ操作をメモしていきます。
例:横スクロールアクションゲームの場合
| 操作 | 内容 |
|---|---|
| 左右矢印キー | 移動 |
| スペースキー | ジャンプ |
| Zキー | 攻撃 |
この例では、移動・ジャンプ・攻撃を組み合わせています。操作数が少なくても、敵やステージの設計などが必要です。
操作の少なさは、プレイヤーに伝える内容を整理する手がかりになります。ただし、少ない操作でも複雑な処理が必要な場合があり、操作数だけで実装量は決まりません。
ステップ③:「ゲームループ」を図にする
ゲームループとは、プレイヤーが繰り返す行動のサイクルのことです。
多くのゲームでは、行動とその結果が繰り返されます。繰り返しに注目して図にすると、構造を整理しやすくなります。
ゲームループの例
クリッカーゲームの場合
クリックする → 数字が増える → アップグレードを買う → さらにクリックが効率化される → クリックする(繰り返し)
横スクロールアクションの場合
進む → 障害物・敵が現れる → 避ける/倒す → さらに進む → ゴールに到達 → 次のステージへ(繰り返し)
図にするときのポイント
紙に矢印で書くだけで十分です。「プレイヤーが何をして、何が起きて、次に何をするか」を矢印でつないでいくと、自然とループの図ができあがります。
ステップ④:「最初の30秒」を観察する
ゲームの冒頭30秒は、プレイヤーが最初に何を見てどう行動するかを観察する一つの目安です。
分析のために、ゲームを起動してから最初の30秒だけを集中して観察してみましょう。以下の点に注目してください。
- 最初に何が表示されるか(タイトル画面?チュートリアル?いきなりゲーム開始?)
- 操作方法をいつ教えてくれるか(テキスト説明?実際にやらせる形式?)
- 最初の「成功体験」はいつ訪れるか(最初の敵を倒す、最初のステージをクリアするなど)
冒頭で何を伝え、どのように興味を引いているかを観察すると、自分のゲームを作るときのヒントになります。作品によって面白さが伝わるまでの時間は異なります。
ステップ⑤:「ゲームオーバー条件」と「クリア条件」を整理する
勝敗のあるゲームでは、次の2つを確認してみましょう。勝敗を設けない作品では、プレイの区切りや目的を整理します。
- ゲームオーバー条件:何をしたら(何が起きたら)負けか
- クリア条件:何を達成したら勝ちか(またはゲームが終わるか)
これを明確に言語化できると、そのゲームの「緊張感の源泉」が見えてきます。
例:パズルゲームの場合
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ゲームオーバー条件 | ブロックが画面上部まで積み上がったとき |
| クリア条件 | なし(スコアを競うエンドレス型) |
例:横スクロールアクションの場合
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ゲームオーバー条件 | 敵に触れるか、穴に落ちたとき |
| クリア条件 | ゴール地点に到達したとき |
条件がある作品では、その判定に必要な処理も考えてみましょう。実装の複雑さは、条件以外の機能にも左右されます。
ステップ⑥:「自分だったらどう変えるか」を考える
最後のステップは、分析を自分の企画に活かすことです。
プレイ・分析が終わったら、以下の問いに答えてみましょう。
- このゲームで一番面白い部分だけを残すとしたら何か?
- このゲームに何か1つ足すとしたら何を足すか?
- このゲームのルールを少し変えたらどんなゲームになるか?
この「改変思考」が、オリジナルゲームの企画につながっていきます。既存作品の分析から得た着想を、自分の目的や表現に合わせて発展させてみましょう。1点だけ変えれば権利上の問題がなくなるとは限りません。素材や具体的な表現を利用する際は、権利と利用条件を確認してください。
分析メモのテンプレート
ここまでのステップをまとめた分析メモのテンプレートをご用意しました。プレイしながら書き込んでいくだけで、分析が完成します。
■ ゲームタイトル:
■ ジャンル:
■ プレイ時間(1回あたり):
【直感メモ】
・面白かった瞬間:
・ストレスを感じた瞬間:
・もう一度やりたいか:
【操作の種類】
・操作1:
・操作2:
・操作3:
【ゲームループ】
(矢印でつないで書く)
【最初の30秒】
・最初に表示されるもの:
・操作説明の方法:
・最初の成功体験:
【ゲームオーバー条件】:
【クリア条件】:
【自分だったらどう変えるか】
・残したい部分:
・足したいもの:
・変えてみたいルール:
まとめ:分析はゲーム開発最強のインプット
今回お伝えしたポイントをおさらいします。
- 分析は「パクリ」ではなく「面白さの構造を学ぶ」行為
- 分析は企画や実装上の課題、作る範囲を考える手がかりになる
- まず「純粋にプレイヤーとして」遊んで直感メモをとる
- 操作の種類から必要な処理を考える
- ゲームループを図にするとゲームの骨格が見える
- 最初の30秒の設計は自分のゲームにも直接活かせる
- ゲームオーバー条件とクリア条件を言語化して核心をつかむ
- 「自分だったらどう変えるか」の問いがオリジナル企画につながる
上にある分析メモのテンプレートを書き写して、さっそく好きなゲームを1本分析してみましょう。分析はゲームの見え方を変えるきっかけになります。
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