はじめに:「誰でも楽しめるゲーム」は誰にも刺さらない
ゲームを作り始めるとき、「できるだけ多くの人に楽しんでもらいたい」と思うのは自然なことです。でも、その考え方が実は落とし穴になることがあります。
「誰でも楽しめるゲーム」を目指すと、結果的に誰にも刺さらないゲームになりがちです。
難易度を下げすぎるとゲーマーには物足りない。難易度を上げすぎると初心者には辛い。世界観をポップにするとシリアス好きには合わない。シリアスにすると子どもには伝わらない——こうして「すべての人向け」を目指すと、あらゆる方向で中途半端になってしまいます。
プロのゲームスタジオでも、ターゲットプレイヤーを明確に定義してから開発をスタートします。個人開発でも同じです。「このゲームは誰のために作るのか」を最初に決めることが、完成度の高いゲームへの近道です。
ターゲットを決めると何が変わるのか
ターゲットプレイヤーを決めると、ゲームのあらゆる設計判断がしやすくなります。具体的にどんなことが変わるか見てみましょう。
難易度設計
ターゲットがゲーム初心者なら、最初のステージは「絶対に失敗しない」レベルから始めるのが基本です。一方、ゲーマー向けなら最初から歯ごたえのある難易度でも問題ありません。
操作設計
子ども向けやスマホユーザー向けなら、タップ1つで操作できるシンプルさが重要です。コアゲーマー向けなら、複数ボタンの組み合わせを使った操作も受け入れられます。
UI・テキスト
初心者向けなら説明テキストを丁寧に、アイコンも分かりやすく。ゲーマー向けなら説明を省いてスッキリしたUIのほうが好まれることもあります。
世界観・グラフィック
ターゲットの年齢層や好みに合わせた世界観にすることで、プレイヤーの没入感が上がります。子ども向けならカラフルでポップに、大人向けなら落ち着いたトーンに、ホラー好き向けなら暗く不気味に——ターゲットによって最適解が変わります。
ターゲットを決める3つの軸
ターゲットプレイヤーを決めるときは、以下の3つの軸で考えると整理しやすくなります。
軸①:年齢・ゲーム経験
プレイヤーがどのくらいゲームに慣れているかによって、ゲームの作り方は大きく変わります。
| タイプ | 特徴 | 設計のポイント |
|---|---|---|
| ゲーム初心者 | 操作に不慣れ・ルールを覚えるのに時間がかかる | チュートリアル必須・操作は最小限 |
| ライトゲーマー | 普段からスマホゲームを遊ぶ程度 | 直感的な操作・短時間で遊べる |
| コアゲーマー | ゲームに多くの時間を使う・高難易度も好む | 歯ごたえのある難易度・やり込み要素 |
軸②:プレイスタイル
同じゲーム経験があっても、プレイスタイルは人によって異なります。
- のんびりプレイ派:焦らずゆっくり楽しみたい。パズルやノベルが好き。時間制限が苦手。
- 本気プレイ派:高スコアやクリアタイムにこだわりたい。競争・やり込みが好き。
- 探索派:隅々まで調べて隠し要素を見つけたい。世界観の作り込みを重視。
軸③:プレイ環境
どんな状況でゲームを遊ぶかも、設計に大きく影響します。
- スマホ・短時間プレイ:通勤中・休憩中などの隙間時間。1回3〜5分で区切りよく終われる設計が重要。
- PC・長時間プレイ:自宅でじっくり遊ぶ。複雑な操作・深いゲームシステムも受け入れられる。
- ブラウザゲーム:インストール不要。手軽に始められることが最重要。
ターゲット別・ゲーム設計の変わる点
3つの軸を組み合わせると、ターゲット像が浮かび上がってきます。ここではわかりやすく3つのターゲット例を挙げて、設計の違いを比較してみます。
ターゲット例A:ゲーム初心者の社会人(30代・スマホ)
- 難易度:やさしめ。失敗しても何度でも挑戦できる
- 操作:タップのみ、またはスワイプ程度
- 1回のプレイ時間:5分以内で区切りよく終わる
- テキスト:ルール説明はていねいに。専門用語は使わない
- 世界観:日常的・親しみやすいテーマ
ターゲット例B:学生のライトゲーマー(10〜20代・PC)
- 難易度:普通〜やや難しめ。クリアしたときの達成感を重視
- 操作:キーボード+マウス。2〜4種類の操作まで
- 1回のプレイ時間:15〜30分程度
- テキスト:説明は簡潔に。操作はやりながら覚えさせる
- 世界観:ポップ・ファンタジー・SF など幅広く
ターゲット例C:コアゲーマー(年齢問わず・PC)
- 難易度:高め。死にゲー要素・タイムアタックなど歯ごたえが必要
- 操作:複雑な操作も可。コンボや上級テクニックがある
- 1回のプレイ時間:制限なし。やり込めるほど良い
- テキスト:説明は最小限。「見て覚える」設計でも可
- 世界観:作り込まれた独自の世界観が好まれる
「自分自身」をターゲットにする方法
ターゲット設定で迷ったときの、初心者に最もおすすめのアプローチが**「自分自身をターゲットにする」**ことです。
なぜ自分をターゲットにするといいのか
- 「面白いかどうか」の判断がしやすい:自分がプレイして楽しければ、同じような人にも刺さる可能性が高い
- リサーチ不要:自分の好みは自分が一番よく知っている
- こだわりが生まれる:「自分が本当に遊びたいゲーム」を作るので、細部まで丁寧に作れる
やり方
まず、自分がよく遊ぶゲームのジャンル・難易度・プレイ時間・好きな要素を書き出してみましょう。それがそのまま、ターゲットプレイヤーの輪郭になります。
💡 ポイント 「自分と似たような人」が世の中に一定数いれば、そのゲームは受け入れられます。完全に自分だけの趣味に特化したゲームでも、同じ趣味を持つ人には深く�刺さります。
ターゲット設定シート(テンプレート)
ここまでの内容を整理するための、ターゲット設定シートをご用意しました。企画書と一緒に使ってください。
■ ターゲットプレイヤー設定シート
【基本情報】
・年齢層:
・ゲーム経験:(初心者 / ライトゲーマー / コアゲーマー)
・主なプレイ環境:(スマホ / PC / ブラウザ)
【プレイスタイル】
・プレイ時間(1回あたり):
・好きなプレイスタイル:(のんびり / 本気 / 探索)
【好きなゲームの傾向】
・好きなジャンル:
・好きな面白さの種類:(達成感 / 成長感 / 驚き / 競争 / 没入感 / 創造 / 緊張と解放)
・苦手なもの・避けたいもの:
【このゲームに求めること】
・プレイ後にどんな気持ちになってほしいか:
・どんなシーンで遊んでほしいか:
【一言でいうとどんな人か】
(例:「休憩時間にサクッと遊びたい、ゲーム初心者の社会人」)
記入例
■ ターゲットプレイヤー設定シート
【基本情報】
・年齢層:20〜30代
・ゲーム経験:ライトゲーマー
・主なプレイ環境:スマホ
【プレイスタイル】
・プレイ時間(1回あたり):5〜10分
・好きなプレイスタイル:のんびり
【好きなゲームの傾向】
・好きなジャンル:パズル・クリッカー
・好きな面白さの種類:達成感・成長感
・苦手なもの・避けたいもの:時間制限・高難易度・長いチュートリアル
【このゲームに求めること】
・プレイ後にどんな気持ちになってほしいか:「スッキリした」「また明日もやろう」
・どんなシーンで遊んでほしいか:通勤中・寝る前のちょっとした時間
【一言でいうとどんな人か】
「隙間時間にスマホでのんびり遊びたい、パズル好きの社会人」
まとめ
今回お伝えしたポイントをおさらいします。
- 「誰でも楽しめるゲーム」を目指すと、誰にも刺さらないゲームになりやすい
- ターゲットを決めると難易度・操作・UI・世界観の設計判断がしやすくなる
- ターゲットは「年齢・ゲーム経験」「プレイスタイル」「プレイ環境」の3軸で考える
- 迷ったら「自分自身をターゲットにする」のが初心者に最もおすすめ
- ターゲット設定シートを企画書と一緒に使って、設計の軸を作ろう
次回は「1人開発に向いているゲームの規模感」について解説します。どこまで作ればいいのか、どこで妥協すべきかの判断基準をお伝えします。お楽しみに!
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