対応バージョン:Unity 6.3 LTS(6000.3系)/WebGL出力 この記事はシリーズ全11回の第1回です。キャッチゲーム・ランナーゲームの実践記事と同じ環境・同じスタイルで書いています。 【PR】本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。
これまでの実践記事では「落ちてくるアイテムをキャッチするゲーム」「横スクロールのジャンプ避けゲーム」を作ってきました。どちらも「プレイヤーが動いてスコアを稼ぐ」タイプのゲームでしたが、今回は全然違う方向に挑戦します。
会話と推理で謎を解くミステリーアドベンチャーゲームです。
しかも最終的にブラウザで遊べる状態(WebGL出力)まで持っていくことを目標にします。今回の記事ではUnityを開く前の段階——「どんなゲームにするか」「誰が登場するか」「どんな台本を書くか」——を扱います。
目次
- 今回作るもの
- ジャンル選定:なぜ「会話・尋問パート中心」にしたか
- 企画の骨格を決める
- キャラクター設定
- 台本の書き方
- エンディング分岐の設計思想
- 完成した企画書を振り返って
- 次回予告
- あわせて読みたいおすすめ書籍【PR】
- この記事を作成するにあたって参考にしたサイト
今回作るもの
タイトル(仮):「波無島事件」
離島を旅行中の週刊誌記者・水瀬凛が、地元のラウンジでぼったくりに遭遇したことをきっかけに、観光客失踪事件の真相に迫っていくミステリーアドベンチャーゲームです。
- プレイヤーは4人のキャラクターと会話し、情報を集める
- 集めた証拠を使って容疑者を追及する
- エンディングは選択によって2種類に分岐する(TRUE END・BAD END)

ジャンル選定:なぜ「会話・尋問パート中心」にしたか
最初に考えたのは「初心者が完走できるスコープに収まるか」という点でした。
アクション・シューティングのようなゲームは、移動・攻撃・エフェクト・難易度設計など、作り込むべき要素が無数にあります。一方、会話・尋問パート中心のアドベンチャーゲームは「テキストを表示する」「選択肢を選ぶ」「フラグを管理する」の3つが核心で、見た目の演出を後回しにしてもゲームとして成立します。
またブラウザで動かす(WebGL出力)ことを最終目標にしていたため、重い3Dグラフィックを避けたかったという理由もありました。テキスト中心のゲームはデータが軽く、WebGLとの相性がよいです。
「1ボタンでジャンプするランナーゲーム」がシンプルな操作で完走しやすかったのと同じ理由で、「話題カードを選んで会話を進める」というシンプルなインターフェースにしました。
企画の骨格を決める
企画を決めるとき、最初に以下の3つだけを決めました。
① 舞台と雰囲気:旅行者が訪れる離島。閉鎖的なコミュニティ、夜の港、薄暗いラウンジ。
② 事件の種類:ラウンジでのぼったくりをきっかけに観光客が行方不明になる。
③ プレイヤーキャラクターのイメージ:週刊誌記者。元風俗ライターの経歴から夜の業界に精通している女性。
この3つから自然に「真相は誰か」「何が隠されているか」を考えていくと、ゲームの流れが見えてきました。
ゲームの流れ(章立て)
第1章:到着
凛が島に来た夜、月凪(ラウンジ)でぼったくりに遭う。
翌朝、旅行者の松本から友人・木下健太の失踪を相談される。
第2章:聞き込み
島の関係者4人に話を聞いて回る。
最初は全員「知らない」と言う。
第3章:矛盾
集めた情報から田中警官の証言に矛盾が見つかる。
松本が証拠動画を隠し持っていたことが判明。
第4章:追及と決断
田中を証拠で追い詰め、健太の居場所を突き止める。
「記事にするか・しないか」の最終選択。
真相:島の駐在警官・田中浩二がラウンジと共謀し、ぼったくりに抵抗した健太を廃旅館に軟禁していた。
エンディング分岐
エンディングは2種類用意しています。どちらに辿り着くかは、第4章の最後に訪れる「たった一つの選択」で決まります。詳しくはぜひ実際に遊んで確かめてみてください。
キャラクター設定
登場人物は5人に絞りました。多すぎると会話データの作成が膨大になり、完走できなくなるためです。
水瀬 凛(主人公・プレイヤーキャラクター)
- 年齢:32歳
- 職業:週刊誌記者(元風俗ライター)
- 性格:頭が切れて度胸がある。少し無鉄砲。
- 役割:プレイヤーが操作する視点キャラクター。モノローグで内心を語る。
桐島 沙耶(ラウンジ「月凪」のママ)
- 年齢:38歳
- 性格:艶っぽく本心を見せない。東京の夜の世界を経験してきた。
- 秘密:事件の一端を知っているが、島で生きていくために黙っている。
- キャラクターとしての役割:序盤は情報をくれない。凛との会話を重ねるごとに少しずつ心を開く。
田中 浩二(島の駐在警官・容疑者)
- 年齢:28歳
- 性格:人当たりがよく最初は頼りになりそうに見える。
- 秘密:ラウンジのオーナーの義理の甥で、借金のカタに共犯者になっている。
- キャラクターとしての役割:序盤は協力的なふりをして情報を隠す。証拠を突きつけると崩れる。
松本 翔(被害者の友人)
- 年齢:27歳
- 性格:狼狽しているように見えるが、実は証拠動画を隠し持っている。
- キャラクターとしての役割:最初の依頼人。終盤に証拠を渡すキーパーソン。
磯部 茂(漁師・島の古株)
- 年齢:70代
- 性格:無骨で寡黙。島の裏事情をすべて知っている。
- キャラクターとしての役割:情報屋的な存在。廃旅館への道を教えてくれる。
台本の書き方
台本は「話題カード」ごとに分割して書きました。1つの会話データ(DialogueData)が1つの話題カードに対応します。
たとえば桐島沙耶との会話は以下のように分割しています。
話題カード①「あの夜のこと」
→ 健太が店に来た経緯・田中を呼んだ事実
話題カード②「田中警官との関係について」
→ オーナーの親戚という情報
話題カード③「島を出ようと思ったことは?」
→ 沙耶の過去・本音
話題カード④「月凪の過去について」(フラグ解放後)
→ 廃旅館の方向という重要情報
④は①を聞き終えたあとに初めて出現します。「前の情報を聞いたから次の話題が解放される」という流れを作ることで、ゲームに自然な進行感が生まれます。
台本を書くときに気をつけたのは「誰がどの情報を持っているか」の整理でした。
たとえば松本は健太が月凪で揉めた場面を直接見ていません(先に宿に帰っていたため)。最初の台本では「すごい額を請求されたって揉めてたみたいで」というセリフを書いたのですが、「なぜ松本が知っているのか」という矛盾に気づきました。「宿に戻る前に健太からLINEが来て、そこで教えてもらった」という形に修正することで、情報の出所が自然になりました。
台本はどれだけ丁寧に設定を作っても、書き起こすと矛盾が見つかります。「この情報をこのキャラクターが知っている理由は何か」を一つひとつ確認しながら書くことが大事です。
エンディング分岐の設計思想
エンディングの分岐は、単純に「正解か不正解か」ではなく「プレイヤーが何を選ぶか」で決まるようにしました。
どちらのエンディングも「証拠を集めて真相に辿り着く」という点は同じです。ゲームのクライマックスで訪れる「たった一つの選択」だけが分岐のポイントになっています。
設計するうえで意識したのは、「どちらを選んでも間違いではない」という感覚を持たせることでした。片方が明らかに正しくて、もう片方が失敗、という構造だと、プレイヤーは「正解を探す」ことに集中してしまいます。どちらの選択にも一定の理由や感情が伴うように設計することで、選んだあとに「本当にこれでよかったのか」という余韻を残せます。
実際にどんな選択が待っているかは、ゲームをプレイして確かめてみてください。
完成した企画書を振り返って
実際に台本まで書いてみて分かったのは、ゲームの規模は最初に決めた「登場人物の数」でほぼ決まるということでした。
5人のキャラクター×平均3〜4つの話題カード=約19個の会話データ。これがこのゲームの「実装ボリューム」のほぼすべてです。最初に「5人・各3〜4話題」という制約を決めたことで、スコープが膨らまずに済みました。
アドベンチャーゲームを作る場合は、キャラクターの数を決めてから企画を詰めていくことをおすすめします。
⚠️ ハマったポイント
- 「誰がどの情報を知っているか」を整理せずに書き始めると、台本に矛盾が生まれやすい。キャラクターごとに「知っていること・知らないこと」を箇条書きで整理してから書くと修正が少なくなる
- 話題カードを増やしすぎるとボリュームが膨大になる。「1キャラクター3〜4話題」という制約を先に決めてから台本を書くのがおすすめ
次回予告
第2回では、いよいよUnityを開きます。プロジェクトの作成・フォルダ構成・ScriptableObjectを使ったデータ設計など、実装前の「下ごしらえ」を詳しく解説します。
あわせて読みたいおすすめ書籍【PR】
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- 『作って学ぶゲームプログラミング Unity まるっと入門 Unity6完全対応』(トライタム 著/吉谷幹人 監修) ── ScriptableObjectやフラグ管理など、今回のシステム設計に直結する内容を含む
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- 『作って学べる Unity本格入門 Unity6対応版』(賀好昭仁 著/技術評論社) ── 今回のシリーズを読み終えてさらにステップアップしたい人向けの中級者向け書籍
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