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ゲームやツールを公開したものの、購入が少ない。価格を下げれば、もう少し選んでもらえるのではないか。販売数を見ていると、そんな考えが浮かぶことがあります。
値下げを検討するときは、まず作品を知った人が、何を理由に購入へ進まなかったのかを調べます。価格を知る前にページを閉じた場合と、内容を理解したうえで予算に合わなかった場合では、確かめることが変わります。
今回の目標は、認知・説明・価格のどこを先に見直すか決め、変更する理由と確かめ方を残すことです。第2回の価格案と、第3回の無料・有料の範囲を使って進めます。
購入数だけで価格が原因と決めず、手前の状態を確かめる
紹介ページへの訪問が少ない場合は、作品の存在や内容が、想定する相手に届いているかも確かめます。ページに人が来ていても、どんな作品か伝わらず、購入を検討する前に離れているかもしれません。
まずは既存の管理画面で確認できる数字と、実際に紹介や体験版を見た人の反応を並べます。記録がない場合は、購入がゼロだったのか、計測できていないのかも分けて確認します。
| 確認できた状態 | 次に確かめること | 見直す候補 |
|---|---|---|
| 想定する相手の訪問がほとんど確認できない | 告知が届いているか、訪問を記録できているか | 届ける場所、紹介への入口、計測 |
| 訪問はあるが、どんな体験・作業ができるか伝わっていない | 画面と説明から内容を理解できるか | 実画面、利用例、対応環境や条件の説明 |
| 内容を理解して試した人から、価格と期待が合わない理由を聞けた | 予算、代替手段、必要な内容との違いは何か | 価格、含める内容、届ける相手 |
この表だけで原因が確定するわけではありません。数字が少ないときは割合の差を決め手にせず、試せなかった理由や、購入を迷った理由を聞くところから始めます。
訪問や購入の数字をどう定義し、同じ条件で比べるかは、マーケティング入門第8回で説明しています。今回は、その記録を価格変更の判断に使います。
「高い」と感じた理由を、提供内容と一緒に聞く
価格について聞くなら、「いくらなら買いますか」だけで終えず、何を得られると思ったか、ほかに何と比較したかも確かめます。
例えば短編ゲームなら、期待していた遊び方、対応する端末、遊ぶために必要な時間などを聞きます。画像ツールなら、今の代替手段、必要な処理量、出力形式、買い切りと継続課金のどちらを想定したかが手掛かりになります。ここで挙げた質問は自作を調べるための提案です。
「高い」という言葉の背景には、予算を超えている、欲しい機能が含まれていない、購入後に何ができるか分からない、といった違いがあり得ます。説明不足が分かったなら、その点を直してから価格の妥当性を考えます。
内容を理解した相手にも価格と価値が合わないなら、第2回で比較した作品や料金条件へ戻り、金額や提供範囲を見直す材料にします。一人の回答をすべての利用者の意見に広げたり、「この金額なら買う」という回答を販売数の予測に置き換えたりはしません。
Factorioは、セールに参加しない方針を説明している
前回は『Factorio』の無料体験版を取り上げました。今回は、同じ作品の価格方針を見ます。公式FAQは、Steamセールやバンドルへの参加を予定しているかという質問に参加しないと答え、求めている価格はゲームに対して公正だと考える価格だと説明しています。Factorioの公式FAQ
ここから参考にできるのは、自分たちがどんな方針で販売するかを、購入を検討する人へ説明していることです。割引をしないことが成功の原因だったかは、このFAQだけでは分かりません。また、セールへの不参加と、将来も通常価格を一切変えないという約束は別です。
自作でも、通常価格を見直すのか、期間を決めて割引するのか、今回は価格を保つのかを整理します。作品の知名度や利用者との関係が異なるため、Factorioの方針をそのまま採用すればよいとは限りません。自分が確認した課題に対応するかで選びます。
値下げ後に売れても、価格だけの効果とは限らない
Steamworksの割引資料では、20%以上の割引がウィッシュリスト登録者への通知につながり得ることや、割引した作品がセール向けの掲載枠に表示される条件を説明しています。Steamworksの割引の説明
割引を実施すると、安くなることに加え、作品を見かける機会や訪問する人の構成も変わる可能性があります。更新や配信者の紹介が同じ時期にあれば、それも一緒に記録します。前の週より売れたとしても、その増加を値下げだけの効果とは断定できません。
告知経路を分けるため、対応する販売先ではUTMというリンクの目印を使う方法もあります。ただし、SteamのUTMレポートは訪問や成果の集計に条件があり、すべての購入を一つの告知へ結び付けられるわけではありません。SteamworksのUTM計測の説明
価格変更を考える段階では、まず確認できる範囲で、期間、訪問、購入、告知や更新の有無を残せば十分です。細かな比較をするために、少ない訪問者を無理に分割する必要はありません。
販売本数と、売上や受取額を分けて比べる
値下げ後に販売本数が増えても、売上が同じように増えるとは限りません。次は、計算の違いを示すための架空の数字です。期間の長さを同じにしたと仮定していますが、同じ人へ同じ条件で比較した実験ではありません。
| 状態 | 販売価格 | 販売本数 | 価格×本数の売上 |
|---|---|---|---|
| 変更前 | 1,000円 | 10本 | 10,000円 |
| 20%引きの期間 | 800円 | 12本 | 9,600円 |
この例では本数は増えていますが、売上は減っています。800円で10,000円以上の売上にするには、端数を切り上げて13本が必要です。ただし、実際に13本売れるかは、この計算では分かりません。
ここで計算した売上は、手数料や返金などを差し引く前の単純な「価格×本数」です。受取額や利益ではありません。実際の変更を振り返るときは、販売先の集計条件を確認して、受取額も別に並べます。返金など、反映に時間がかかる数字は、集計日時と、反映が済んでいるかも記録します。
何を目指して変更したのかも、数字と一緒に残します。今回は新しい購入者との接点を作ることが目的だったのか、費用をまかなう受取額を増やしたかったのか。目的が違えば、振り返る結果も変わります。継続して提供できるかを費用と対応時間から考える方法は、第5回で扱います。
価格を変えるなら、目的と期間、見直す条件を先に決める
調べた結果に合わせて、今回の対応を一つ選びます。
- 認知や説明に課題があるなら、その箇所を直し、価格はひとまず保つ。
- 通常の提供内容と価格が合っていないと判断したなら、通常価格や提供範囲の見直しを検討する。
- 限られた期間に購入を検討してもらう機会を作るなら、期間と目的を決めた割引を検討する。
値下げを選ぶ場合も、先に販売先の設定条件を読みます。Steamには発売後や値上げ後、割引の終了後などに関わる待機期間があり、通常価格の変更と割引は同じ操作ではありません。次の告知予定と両立するかも、最新の公式条件で確認します。Steamworksの割引ルール
第3回と同じ短編探索ゲームと画像ツールで考えてみます。どちらも説明用の架空の作品です。
ゲームの配布ページを見た相手から「どの端末で遊べるか分からなかった」と聞けたなら、今回は対応環境の説明を直す案があります。その状態で価格だけを変えても、確認できた迷いは残ります。
画像ツールなら、少量を処理したい人から「一括処理の上限をここまで増やす必要はない」と聞けた場合、安くする案に加えて、提供範囲と相手が合っているかを調べられます。少ない声だけで直ちに料金プランを増やさず、同じ用途の人にも必要な範囲を確かめます。
変更の前に、根拠と確認する結果を書いておく
次の欄を埋めて、今回は何を変えるか、または先に何を確かめるかを決めます。
| 書き出すこと | 自分の作品についてのメモ |
|---|---|
| 今回の課題と、目指す結果 | ____________ |
| 確認できた訪問・購入の数字、期間、集計条件 | ____________ |
| 利用者が購入を迷った理由と、その確認方法 | ____________ |
| 認知・説明・価格のうち、先に調べる場所 | ____________ |
| 今回変えること、または先に確かめること | ____________ |
| 価格を変える場合の金額、期間、販売先の条件 | ____________ |
| 同じ時期の告知、更新、外部での紹介 | ____________ |
| 見直す時期と、確認する本数・売上・受取額 | ____________ |
まずは、購入が少ないと感じた期間の記録を開き、価格を理由に迷ったと判断できる材料があるかを確かめてみましょう。まだ理由が分からなければ、紹介や体験版を見てもらい、どこで迷ったかを聞くことを次の行動にできます。
第5回「売上が出ても続けられない? 費用と対応時間から提供方法を見直す」では、売上、運営に必要な費用、問い合わせや更新に使う時間を並べ、続けられる提供範囲を考えます。
価格を見直す考え方を本で学びたい方へ
値下げや提供内容の変更を体系的に考えたい場合は、値付けや価格戦略の入門書を探す方法もあります。目次や試し読みで、顧客が感じる価値、価格変更、販売条件の違いを扱っているか確認してください。
リンク先は書籍の検索結果です。本文の記入表は、本を購入しなくても使えます。本を選ぶ際は、目次、刊行年、価格を確認し、目的に合うものを選んでください。
事例の方針と販売先の条件は2026年11月2日に公式資料で確認しました。実際に値下げや販売管理画面の操作を行い、その効果を測定したものではありません。設定する際は公式ページの最新情報を確認してください。
