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ゲームの最初の部分を無料にする。ツールの一部の機能を試せるようにする。購入する前に使ってもらう方法を考えると、どこまで無料で提供すればよいのか迷うことがあります。
無料の範囲を狭くしすぎると、作品の良さを感じる前に終わってしまいます。広くすれば、その分の制作や確認が必要になり、無料の範囲で目的を果たす人もいるでしょう。今回は、購入を判断するために何を試せるとよいかを決め、無料と有料の境界を説明できるようにすることを目指します。
第2回で考えた価格案と、購入で得られる内容を手元に置いて進めてください。まだ金額が決まっていなくても、試してほしい体験から書き出せます。
体験版と、使い続けられる無料プランを区別する
無料で使える仕組みには、いくつかの形があります。例えば、次のような設計が考えられます。
| 形 | 無料でできること | 有料で提供する内容の例 |
|---|---|---|
| 内容を区切った体験版 | 選んだステージや機能を試す | 本編の続き、より広い機能 |
| 期間を区切った試用版 | 決めた期間、対象の機能を使う | 期間後も継続して使える権利 |
| 使い続けられる無料プラン | 決めた機能や利用量の範囲で使う | 利用量の追加、別の機能やサービス |
これは特定サービスの仕様ではなく、分け方を考えるための例です。無料プランなら、無料の範囲だけで使い続ける人がいることも前提に、運営の費用や対応を続けられるか考えます。購入前の判断を助ける体験版とは、役割が違います。
どれを選ぶ場合も、期限や回数などの制限と、その後どうなるかを先に決めます。「無料版」とだけ書いて、途中まで進んでから条件が分かる形は避けたいところです。
Factorioは、基本の仕組みを学ぶ無料体験版を用意している
工場を建設・運営するゲーム『Factorio』は、公式サイトで無料の体験版を配布しています。製品版に含まれる内容の一部を使い、ゲームのごく基本的な仕組みを教え、もっと遊びたいかを判断してもらうことが目的と説明されています。Factorioの公式体験版案内
Factorioの案内は、無料で提供する内容と、利用者に判断してほしいことを結び付けています。自分のゲームでも、「操作方法を覚える」「その操作で工夫する」「工夫した結果を受け取る」という流れのうち、どこまで遊べると面白さを判断できるかを考えられます。この流れは自作への応用案であり、Factorioの体験版を実際にプレイして確認した記録ではありません。
Steamworksも、体験版は作品の中心的な仕組みを示す遊べる部分とし、実際の製品に見合う品質や、内容の長さのバランスを考えるよう説明しています。Steamworksの体験版資料
自作のアクションゲームなら、移動の練習だけで終えず、その操作で障害を越える場面まで含める案が考えられます。物語のあるゲームなら、説明の会話だけで終えず、選択や探索で何かが分かる場面を入れる。どのくらいの時間にするかは、その体験に必要な内容から考えます。
Asepriteは、試用版で保存できないことを先に示している
ピクセルアート制作ツールのAsepriteは、試用版の配布ページで、ファイルを保存できないことを明記しています。Asepriteの公式試用版案内
この方式なら、保存を含めて成果物を残す作業は試せません。自作のツールで似た制限を使う場合も、どこまで操作を確かめられ、何が確認できなくなるかを考えます。制限を設けること自体を、購入してもらうための共通の正解とは扱いません。
例えば、画像をまとめて変換するツールで、出力結果を確認することが購入判断に欠かせないなら、少量の画像で保存まで試せる形も候補です。操作感を試してもらうことと、出力したファイルが自分の用途に合うか確かめてもらうことでは、残す機能が変わります。
作業を終えてから初めて保存の制限を知ると、利用者は期待していた結果を得られません。保存や出力を制限するなら、配布ページと作業開始前の画面で伝えることを、自作の設計に含めます。
無料で試す範囲と、有料で広がる範囲を書き分ける
ここからは、前の回と同じ短編探索ゲームと、画像の幅をまとめてそろえるツールを使います。いずれも説明用の架空の作品です。表の制限は実測した最適値ではなく、検討するための案です。
短編探索ゲームなら、会話で手掛かりを知り、探索して、一つの小さな謎を解くところを無料体験版にする案があります。本編では別の場所を探索し、物語全体の謎へ進みます。無料の部分にも一区切りを設け、有料版で何が続くかを伝えます。
画像ツールなら、少量の画像を読み込み、処理し、出力結果を保存して確かめるところまで無料にする案が考えられます。有料版には、より多くの画像の一括処理や、繰り返し使う設定の保存を含める、といった候補があります。必要な機能は想定ユーザーの作業に合わせて選びます。
| 検討する内容 | 短編探索ゲームの案 | 画像ツールの案 |
|---|---|---|
| 購入前に分かってほしい良さ | 会話と探索から謎が解ける楽しさ | まとめて処理し、結果を取り出せる便利さ |
| 無料で試せる範囲 | 一つの小さな謎を解くまで | 少量の画像で読み込みから保存まで |
| 有料で提供する範囲 | 本編の続きと物語全体 | 処理量の追加や設定の保存 |
| 先に伝える条件 | 遊べる範囲、対応環境、引き継ぎの可否 | 処理できる量、出力条件、データの扱い |
有料にする項目は、実装できている内容と照合します。予定している機能を、今購入すれば使える機能として並べないようにします。無料版と有料版で対応環境や言語が違う場合も、それぞれに合う案内が必要です。
制限に達したあと、何が残るかも設計する
ゲームなら、体験版の終了後もセーブが残るか、製品版へ進めるときに続きから遊べるかを決めます。引き継げない設計にする場合は、初めからやり直すことを事前に伝えます。
Steamworksには、体験版と製品版でクラウド保存を共有して、購入後に続きから遊べるようにする方法の説明があります。ただし、すべての作品で自動的に引き継がれるという意味ではありません。自作で採用するなら、保存形式や版の組み合わせを確かめ、実際に引き継ぐ操作を試します。Steamworksの引き継ぎに関する説明
ツールなら、回数や期限に達したあと、編集中の内容や保存済みファイルをどう扱うかを決めます。購入の判断を急がせるために作業中の内容を失わせるような設計は避けます。利用量に上限を設ける場合も、処理を始める前に、今回の操作が対象内か分かるようにします。
終わりの画面では、無料で試せた範囲と、有料で提供する内容、次に進むリンクを示します。購入しない人も、そのまま終了できるようにします。紹介ページから利用するまでの操作を見直す方法は、マーケティング入門第6回で扱っています。
公開前に、試してほしい体験まで届くかを確かめる
無料の範囲を決めたら、まずは自分で最初から試します。普段使っているセーブや設定を引き継がず、初めて使う状態で、始めるところから制限に達するところまで進めます。
- 配布ページだけで、無料でできることと制限が分かるかを読む。
- 対応環境で起動し、中心となる遊びや作業を一度試す。
- 無料の範囲の終わりまで進み、終了や保存の動きを確かめる。
- 有料版で何が増えるか、案内と実際の内容が一致するかを照合する。
- 引き継ぎに対応する場合は、製品版へ移ったあとも続けられるかを試す。
協力してもらえる人がいれば、「どんなところが良かったか」に加えて、「試せずに残ったこと」「有料版でできると思ったこと」を聞いてみます。購入するかどうかを尋ねるだけでは、制限の説明が伝わったかは分かりません。
起動方法で迷って中心の体験まで進めなかったなら、先に操作や案内を直します。体験版の内容を増やすか減らすかは、その体験に届いてから判断します。反応の数や価格変更の評価は、次回以降で扱います。
自分が更新し続けられる範囲で、境界を一つ決める
体験版を作ると、本編の更新に合わせた確認や、無料版だけにある説明・終了画面の手入れも必要になります。最初から複数の制限や無料プランを組み合わせず、自分が管理できる案から始めましょう。
次の欄を埋めると、無料と有料の境界と、公開前に確かめることをまとめられます。
| 書き出すこと | 自分の作品についてのメモ |
|---|---|
| 購入前に試してほしい遊び・作業 | ____________ |
| その良さを確かめるまでに必要な操作 | ____________ |
| 無料で提供する範囲と制限 | ____________ |
| 有料で提供する内容と、無料版との違い | ____________ |
| 終了後のデータ・セーブの扱い | ____________ |
| 作業を始める前に伝える条件 | ____________ |
| 更新時に確認が必要な箇所 | ____________ |
| 公開前に試すこと、利用者に聞きたいこと | ____________ |
まずは一つの遊びや作業を選び、どこまで試せれば良さが分かるかをたどってみてください。無料の範囲と、有料で提供する内容をそれぞれ一文で説明できれば、案内文や実装を確かめる基準にもなります。
第4回「売れないとき、値下げする前に確かめたいこと」では、認知、説明、価格のどこを見直すかを整理し、変更を判断する手順を考えます。
提供する価値と価格の関係を本で整理したい方へ
無料と有料の範囲を考えるときに、利用者が感じる価値や価格戦略を体系的に学びたい場合は、入門書を探す方法もあります。目次や試し読みで、自分に近い商品・サービスの例や、提供範囲を考える説明があるか確認してください。
リンク先は書籍の検索結果です。本文の記入表は、本を購入しなくても使えます。本を選ぶ際は、目次、刊行年、価格を確認し、目的に合うものを選んでください。
事例の提供条件は2026年11月2日に公式資料で確認しました。作品の実操作や、体験版による売上への効果を検証したものではありません。実際に利用・設定する際は、公式ページの最新情報を確認してください。
