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有料で提供する方針は決まった。でも、いくらにすればよいのか。近いゲームやツールの価格を見ても、自分の作品にその金額を付けてよいのか迷うことがあります。
最初の価格は、比較する作品、利用者が得られる体験や便利さ、提供に必要な費用を並べて考えます。今回の目標は、価格案を一つ決め、選んだ根拠と、まだ確かめたいことを残すことです。最も売れる価格を、公開前に言い当てる必要はありません。
第1回では、無料公開、買い切り、継続課金などの提供方針を整理しました。今回は、買い切りを中心に金額の考え方へ進みます。月額・年額の料金を考える場合も、まず何に対する支払いかをそろえて比較してください。
金額を調べる前に、購入で得られる範囲をそろえる
同じ1,000円でも、ゲーム一本を遊べるのか、ツールを一か月使えるのかで意味が変わります。比較を始める前に、自分の作品について次の内容を短く書きます。
- 誰が、どんな場面で使う作品か。
- 一度の支払いで、どこまで遊べる・使えるのか。
- 対応環境、利用条件、更新や問い合わせ対応に含める範囲は何か。
ここでは詳細な料金プランを作り込まず、比較の単位を決めます。例えば「Windows向け短編ゲームの本編一式」「画像を端末内でまとめて処理するツールの個人向けライセンス」といった形です。
本編だけの価格と、追加コンテンツを含むセット価格も区別します。月額料金と年額一括払いの月換算額、無料体験と有料版など、条件が違う数字をそのまま比べないようにします。
近い作品を選び、価格と条件を一緒に記録する
比較対象は、同じジャンルという理由だけで選ばず、想定する相手と利用場面が近いものから探します。短い物語を楽しみたい人向けのゲームなら、その人が同じ機会に購入を検討しそうな作品が候補になります。
Steamworksの価格設定資料も、類似ゲームを調べ、遊び、レビューや反応から顧客が感じる価値を理解して、自分の価格を決めるよう勧めています。Steamworksの価格設定の説明
まずは比較する作品を、例えば3本選んでみましょう。売れた有名作品だけに偏らず、自分に近い規模や新しい作品も探します。公式の販売ページで確認できる事実と、自分が遊んだ感想を分けて記録します。未プレイなら、そのことも残します。
| 記録すること | 確認する内容 |
|---|---|
| 比較する理由 | 想定する相手、楽しみ方・使い方の共通点 |
| 価格と確認日 | 通貨、購入地域、表示額、確認した日 |
| 販売条件 | 通常価格か割引中か、本体だけかセットか、税などの表示条件 |
| 含まれる内容 | 遊び・機能の範囲、対応環境、更新の扱い |
| 自作との違い | 自作にある価値、足りない内容、比較できない条件 |
分からない項目は「未確認」にします。海外の米ドル表示を見た場合は、それを日本向けの円価格と同じ条件とは扱いません。
A Short Hikeを見るなら、価格と一緒に遊びの内容を読む
山を登り、飛び、周囲を探索する『A Short Hike』の開発者によるitch.io販売ページには、2026年11月2日の確認時点で、最低支払額が7.99米ドルと表示されています。Windows・macOS・Linux向けの配布ファイルと、Steamキーが含まれる案内もあります。開発者の公式販売ページ
同じページでは、自分のペースで島を探索すること、釣りや泳ぎ、道中の人物との会話などが紹介されています。比較するときは、金額だけを書き写すのでなく、「どんな時間を過ごせる作品として紹介されているか」も読み取ります。
例えば、自作が短編探索ゲームなら、探索の自由さや物語の見せ方、操作、対応環境などを比べる候補になります。ただし、長く販売されている既存作品には、知名度や更新の積み重ねもあります。この価格から、自作の発売時に適した金額までは決まりません。
「遊べる時間が半分なら価格も半分」といった計算も、今回の比較からは導けません。短さを求める人もいるため、自分の作品でどんな体験が得られるのかを具体的に説明できるか考えます。
ツールは、機能と購入後に使える範囲を比べる
ゲーム以外の例として、ピクセルアート制作ツールのAsepriteを見てみます。公式サイトには、アニメーションの編集や、PNG・JSON形式のスプライトシートへの書き出しなどが紹介されています。Asepriteの公式機能紹介
公式FAQでは、1.x系の配布ファイルを入手する最低支払額を19.99米ドルと説明し、購入に含まれる更新はv1.9までと案内しています。これらは2026年11月2日に確認した内容です。Asepriteの公式FAQ
自作の制作ツールを比べるなら、使いたい作業を終えられるか、出力形式が制作環境に合うか、購入にどこまでの更新が含まれるかを見ます。機能数が同じなら同じ価格になる、という関係ではありません。利用者が必要とする作業に合うかが比較の軸になります。
画像を一括処理するツールなら、今使っているソフトや無料の方法も比較候補です。今のやり方から乗り換えることで、手順や繰り返し作業がどう変わるかを書き出します。Asepriteは画像の幅をそろえる専用ツールとは用途が違うので、その価格を直接の目安にはしません。
制作にかかった時間と、利用者が選ぶ理由を分ける
時間をかけて作ったことは、自分が費用や作業量を振り返る材料になります。ただし、制作時間だけでは、利用者がその価格で選ぶかは分かりません。
前回と同じく、ここでは短編探索ゲームと画像の幅をまとめてそろえるツールを、説明用の架空の作品として使います。
短編ゲームなら、「会話と探索を通して、一つの物語を最後まで楽しめる」という価値を考えられます。その体験を支える操作や演出が、今の版でどこまでできているかも確認します。
画像ツールなら、「毎回一枚ずつ直していた画像をまとめて処理できる」という便利さがあります。ただし、何分短縮できるかは、実際の作業で確認しないと分かりません。時間短縮を価格の根拠に使うなら、対象の画像、枚数、比較した操作をそろえて測ります。
想定する相手に試してもらえる場合は、普段何で代用しているか、どこに手間を感じるかを聞きます。「この値段なら買う」という回答は参考になりますが、実際の購入と同じ意味ではありません。
価格案ごとに、必要な販売数の見通しを置く
利用者から見た価値とあわせて、作り手側の費用も確認します。販売価格からそのまま全額を受け取れるとは限らないため、販売先の手数料や決済費用、税の扱い、返金などを確認し、手元に残る額を見積もります。料率は販売先や条件で異なります。
ここでは計算の仕方を見るため、追加で支払った費用3万円を、今回の販売でまかないたいとします。制作時間への報酬や公開後の対応費用は、この3万円には含めていません。下の価格・受取額はすべて架空の仮定で、特定の販売先の料率や推奨価格を示していません。
| 価格案 | 1件あたりの受取額の仮定 | 3万円をまかなうために必要な販売数 |
|---|---|---|
| 800円 | 600円 | 50件 |
| 1,200円 | 900円 | 34件 |
3万円を1件あたりの受取額で割り、端数を切り上げています。これは費用と必要件数の関係を考えるための計算で、実際に売れる件数の予測ではありません。また、この件数で費用の一部をまかなえても、制作全体が黒字になるとは限りません。
1,200円なら34件必要と分かっても、34件売れる根拠は別に必要です。低い価格で件数を増やす案にも、その件数に届く見通しが要ります。まずは、自分が届けられる相手や、これまで確認できた反応と並べて、どこが未確認かを残します。継続費用と対応時間を含めた判断は、第5回で扱います。
選んだ金額と、まだ分からないことを残す
比較した価格の単純な平均を取るだけでは、販売条件や作品の違いが消えてしまいます。今回集めた材料を使い、最初の価格案を一つ書いてみましょう。
| 書き出すこと | 自分の作品についてのメモ |
|---|---|
| 購入で得られる範囲と支払い方 | ____________ |
| 比較した作品と、自作との共通点・違い | ____________ |
| 利用者が選ぶ理由と、その根拠 | ____________ |
| 最初の価格案、通貨、販売先 | ____________ |
| 想定する受取額と、費用をまかなうための件数 | ____________ |
| まだ分からないこと | ____________ |
| 次に確かめることと、見直す時期 | ____________ |
例えば、短編ゲームなら、近い作品の価格と体験内容を整理し、自作のどんな楽しさを伝えるかを添えます。画像ツールなら、普段の代替手段と比べて、どの作業を楽にできるかを根拠にします。迷いが残る場合も、「比較対象を増やす」「費用の見積もりを確認する」など、次の行動に置き換えられます。
公開時には、販売先の最新の価格設定ルールも確認します。例えばSteamには最低価格や価格変更の条件があります。金額を自由に何度も変えられる前提で公開することは避け、未確認の条件は設定前に調べます。Steamworksの価格設定ルール
第3回「無料版でどこまで使えるようにする? 体験版と有料版の分け方」では、購入を判断するために何を試せるとよいか、無料で提供する範囲と有料の内容を整理します。
価格戦略を本で学びたい方へ
比較する作品や顧客が感じる価値から価格を考える方法を学びたい場合は、値付けや価格戦略の入門書も参考になります。目次や試し読みで、自分の作品に近い商品・サービスの例や、価格を見直す考え方を扱っているか確認してください。
リンク先は書籍の検索結果です。特定の本を購入しなくても、本文の記入表は使えます。本を選ぶ際は、目次、刊行年、価格を確認し、目的に合うものを選んでください。
事例の価格・提供条件は2026年11月2日に公式資料で確認しました。掲載した米ドル価格は当該ページの表示であり、日本向け価格や決済時の総額を示すものではありません。実際に利用・購入・設定する際は、リンク先の最新情報を確認してください。
