実践ガイド

ゲームとアプリの最初の体験①:遊び始めたのに、面白さが伝わらない。最初の体験を見直す

ゲームとアプリの最初の体験 第1回「最初の体験を見直す」

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作品を起動してもらえたのに、少し触っただけで終わってしまう。感想を聞くと、「何をすればいいか分からなかった」と返ってくる。そんなとき、説明を足す前に確かめたいことがあります。

初めて使う人に、どんな体験をしてほしいのでしょうか。

短編ゲームなら、手掛かりを見つけ、自分で考えて仕掛けを一つ解くこと。画像ツールなら、画像を一枚加工し、欲しかった結果を保存すること。この連載では、起動後の操作から、面白さや便利さを実感するまでを考えます。第1回では、最初に体験してほしいことと、そこまでの流れを書き出し、見直す箇所を一つ選びます。

紹介ページから起動し、最初の操作へ進む経路は、公開済みのマーケティング入門第6回で扱っています。今回は、起動後の操作と画面の変化、小さな達成までの体験を詳しく考えます。

「画面を開いた」の先に、最初の小さな達成を置く

作り手は、画面に何があり、どのボタンを押せばよいかを知っています。初めて触る人には、その前提がありません。機能がそろっていても、何を試すとよさが分かるのかは伝わっていないかもしれません。

まず、最初の小さな達成を一文で書いてみます。ゲームでは、操作に慣れる、先の展開が気になる、工夫がうまくいく、といった体験も候補です。必ずしもステージをクリアする必要はありません。

例えば、「移動と調べる操作を覚える」よりも、「机の手掛かりを読み、それを使って隣の扉を開ける」と書くと、作りたい場面が浮かびます。移動や調べる操作を、何のために使ってもらうかも考えられます。

ツールなら、「編集画面を開く」の先に、「自分が指定した幅の画像を一枚保存し、仕上がりを確かめる」という到達点を置く案があります。画面が表示されたかに加え、利用者が何を持ち帰れるかまで見ます。

ここで書くのは作り手の狙いです。その操作を終えた人が面白い、便利だと感じたかは、あとで本人の様子や言葉と照らして確かめます。

Unpackingは、物を取り出して置く操作を遊びの中心にしている

『Unpacking』の公式サイトは、箱から持ち物を取り出し、新しい住まいに収めるゲームだと説明しています。物を配置するパズルと部屋の飾り付けを組み合わせ、持ち物から人物の暮らしを知る作品です。Unpackingの公式紹介

この説明から、自作でも参考にできるのは、作品の中心になる体験を、具体的な操作と結び付けて考えることです。「物を取り出す」「置き場所を選ぶ」「部屋の様子が変わる」と並べると、プレイヤーが何をする作品かを整理できます。

自分のゲームでも、最初の場面で作品らしさを少し試せるかを考えてみましょう。探索が中心なら手掛かりを見つける場面、配置を工夫するゲームなら一つ置いて結果が変わる場面、といった案が浮かびます。

これは公式の作品説明を手掛かりにした設計案です。Unpackingの冒頭を実機で検証した記録や、特定の操作による継続率の改善を示す事例ではありません。

短編ゲームと画像ツールで、最初の流れを並べる

ここからは、短編探索ゲームと、画像の幅をまとめてそろえるツールを例にします。どちらも説明用の架空の作品です。実際に使える機能や、観察して得た結果を記したものではありません。

書き出すこと 短編探索ゲームの例 画像ツールの例
初めて使う人の目的や期待 手掛かりから、小さな謎を解いてみたい 投稿用の画像を指定した幅にそろえたい
最初の小さな達成 メモを読み、対応する仕掛けで扉を開ける 画像を一枚加工し、保存した結果を確認する
そこまでに必要な操作 移動する → メモを調べる → 仕掛けを動かす → 扉の先を見る 画像を選ぶ → 幅を指定する → 仕上がりを見る → 保存する
結果を確かめられる手掛かり 仕掛けが動き、扉が開いて先へ進める 出力する画像と寸法を確認し、保存できたことが分かる

ゲームの例では、扉が開くことに加え、「読んだメモが役に立った」と分かる場面を目指します。扉だけが突然開いてしまうと、何がうまくいったのかを判断しにくいかもしれません。

画像ツールでは、単に「完了」と表示するだけで十分か考えます。どんな見た目になったか、どの寸法で出力されるかを確認できれば、保存する前に意図と合うかを判断できます。見た目だけで寸法が分からない場合は、その情報も必要です。

表の手順は設計案です。自分の作品に置き換えるときは、必要な操作を省かず、現在の画面でたどれる流れを書いてください。案と実際の操作が違うなら、その差もメモしておきます。

止まった場所を、画面で起きたこととして記録する

「分かりにくかった」という感想があったら、どこで止まったかを確かめます。対象を見つけられなかったのか、押した結果が分からなかったのかで、直す場所が変わります。

観察したことの例 次に確かめたいこと 改善案の例
メモの前を通ったが、調べずに引き返した メモに気付いたか、調べられると分かったか 調べられる対象だと分かる見せ方を試す
仕掛けを動かしたあと、同じ場所で止まった 扉の変化に気付いたか、次に何をしようとしたか 動いた結果と進み先の関係を伝える
幅を入力したが、加工や保存へ進まなかった 入力が受け付けられたか、次の操作が分かったか 入力後の状態と次に行う操作を示す
保存後も、目的の画像を使えなかった ファイルを見つけられたか、出力結果が意図と合ったか 保存の完了や、保存先を確認する方法を伝える

「メモの前で止まった」は観察した事実として書けます。一方、「文字が小さかったから読まなかった」は、見ただけでは決められません。本人に何を見ていたかを聞いたり、表示を変えて確かめたりする必要があります。

GOV.UKの利用者調査ガイドも、具体的な課題に取り組む様子を観察する方法を説明しています。初めて使う人が何を理解し、どこで困るかを見るための資料です。GOV.UKの利用者テストのガイド

まずは、最後まで進めたか、助けが必要だったか、本人がどんな結果を得たと話したかを分けて残します。一人が進めたことだけで、初めて使う人全体に伝わると判断しないようにします。観察の準備や質問の組み立ては、第5回で詳しく扱います。

最初に扱うことを絞り、必要な選択は残す

最初からすべてを見せると、何を試せばよいか選びにくくなることがあります。今の小さな達成に必要なことと、そのあとで使うことを分けてみましょう。

短編ゲームなら、最初の仕掛けに使わない操作を同時に教える必要があるか考えます。画像ツールなら、最初の一枚を保存する段階で、すべての出力設定を同じ目立ち方で並べる必要があるでしょうか。

ただし、入力方法や文字の読みやすさを調整する設定は、人によって使い始めるために必要です。作品の起動時に知る必要がある利用条件や、データが送信される操作の説明も、必要な場面で伝えます。画面を短くするために、判断に必要な情報まで後回しにしないようにします。

「最初の5分」のように観察する範囲を決める方法はありますが、どんな作品も同じ時間で達成を迎える必要はありません。物語を読んで雰囲気を味わう作品なら、その時間も体験の一部です。作り手が意図した時間なのか、利用者が進み方を探して止まっているのかを確かめます。

また、操作を一つ終えたことと、次の日も遊ぶ・使うことは別の確認です。今回は最初の体験で確かめる範囲を決め、継続利用への効果までは断定しません。

今回は、見直す箇所を一つ選ぶ

自分の作品について、次の欄を埋めてみてください。

書き出すこと 自分の作品についてのメモ
初めて使う相手と、その人の目的や期待 ____________
最初に体験してほしい、小さな達成 ____________
観察を始める画面と、終える場面 ____________
そこまでに必要な操作と、画面の変化 ____________
今の画面で、まだ確かめていないこと ____________
見直す箇所と、その変更を試す理由 ____________
変更後に確かめる行動や結果 ____________

画面をまだ作っていない場合は、紙の画面案など、操作の順番を考えられる形から始められます。その場合は、実際に動く作品で確認した結果と区別しておきます。

最初の達成まで書けたら、流れをたどり、今の段階で見直したい箇所を一つ選びます。例えば、短編ゲームでは調べられるメモの見せ方を変える。画像ツールでは、保存前に出力寸法を確認できるようにする。その変更で何を確かめたいかも、一緒に残してください。

第2回「説明を増やす前に、触れば分かる場面を作る」では、最初の体験へ進むために、何をどんな順番で覚えてもらうかを考えます。

連載目次:ゲームとアプリの最初の体験

ゲームデザインや使いやすさを本で学びたい方へ

最初の体験を考えるときは、操作と結果、学ぶ順番、利用者の様子を確かめる方法を扱った本も参考になります。ゲームデザインの本なら操作を覚える場面や手応えの作り方、使いやすさを扱う本なら初めて使う人の迷いを調べる方法が、自分の課題と合うかを目次で確認してみてください。

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事例と設計資料は2026年11月3日に公式情報で確認しました。実在するゲームの冒頭や利用者の反応を実機で検証したものではありません。

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