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作ったゲームを紹介するとき、何を見せ、どこで知ってもらえばよいのでしょうか。今回は『Unpacking』『Slay the Spire』『Shovel Knight』を取り上げ、ユーザーへ届いた経緯を比べます。
短い映像で興味を持ってもらうこと。配信を見ている人が自分でも遊べるようにすること。発売前から紹介の機会を積み重ねること。3作品の記録には、それぞれ違った接点があります。
この記事では、開発者の発言や当時の公開記録を確認しながら、自分のゲームで次に試すことを一つ選ぶところまで考えます。作品全体の成功と、一つの施策による効果は分けて読みます。
| 作品 | 今回注目する接点 | 自分の作品で考えたいこと |
|---|---|---|
| Unpacking | 片づける動きが伝わる短い映像 | 説明を読む前に、遊びを想像できる場面があるか |
| Slay the Spire | 配信での発見と、その先の言語対応 | 見た人が、自分でも試したいと思い、実際に遊べるか |
| Shovel Knight | 発売前の支援、イベント・メディアでの紹介 | 発売まで関心をつなぎ、購入を考える接点を用意できるか |
Unpacking:箱から物を出して並べる動きが、紹介になった
『Unpacking』は、引っ越し先で箱から持ち物を取り出し、部屋へ配置するゲームです。荷物を開け、置き場所を選ぶ動きから、どんな遊びなのかを想像できます。
開発者のWren Brier氏とTim Dawson氏へのインタビューによると、2018年に公開したのは、制作中の台所の場面を早回しで見せる短いアニメーション画像(GIF)でした。食器や家電などが箱から取り出され、台所へ並んでいく映像です。その反響から、開発者は幅広い人に届く可能性を感じたと説明しています。また、後に販売を担当するHumbleを含む、複数の販売会社から連絡が来たと振り返っています。開発者インタビュー(GamesRadar+/Edge)
発売後の記録として、Witch Beamは2021年12月14日の公式記事で、発売から最初の10日間に10万本を超えたと報告しています。この販売実績と、制作中のGIFへの反響は、時期も測っているものも違います。GIFを見た人のうち何人が購入したかまで、この記録からは分かりません。Witch Beamの販売実績報告
ここから自分の紹介に応用するなら、まず「遊ぶと何をするのか」が見える場面を探してみます。例えば、自作のパズルなら、悩んでいた配置が一手でつながる場面。経営ゲームなら、注文を受け、品物を渡し、店が動き始める場面などです。
実際のプレイを短く録画し、画面の変化が分かるか、何を楽しむゲームか想像できるかを確かめます。紹介文の一行目も、その映像で伝えた遊びとそろえてみましょう。
『Unpacking』では、その後に販売会社と組んで作品を届けています。個人開発で参考にする部分は、販売体制や規模をそのまま再現することより、紹介の入口になる場面の選び方です。
Slay the Spire:配信で生まれた関心に、言語対応で応えた
『Slay the Spire』は、カードを選んで組み合わせ、挑戦するたびに展開が変わるゲームです。他の人の選択を見ながら、自分ならどうするかを考えられます。
2020年3月のPCGamesNの取材で、開発者のAnthony Giovannetti氏は、早期アクセス中の転機として、中国の配信者による紹介を挙げています。当時まだあまり知られていなかったゲームの配信が100万回を超える視聴を生み、その反応を受けて中国語対応を急いだと説明しています。また、配信者の挑戦を何度も見て、自分ならもっと上手にできるのではと感じた、というプレイヤーの声も紹介しています。開発者への取材(PCGamesN)
100万回超というのは視聴についての数字です。購入者数ではなく、その紹介だけによる販売増加率も示されていません。ただ、開発者が大きな転機と捉え、見ている人が遊ぶための言語対応を進めた経緯は確認できます。
この事例で注目したいのは、紹介された後の対応です。配信をきっかけに興味を持っても、ゲーム内の説明を読めなければ、実際に遊ぶまでの壁が残ります。どの人に届いているかを見て、その人が使える状態に整えることも、マーケティングの一部として考えられます。
開発者のCasey Yano氏によるGDC 2019の講演資料には、配信に加え、週ごとの更新、遊びやすさの改善、翻訳などの取り組みも並んでいます。早期アクセスは、制作途中のゲームを提供し、更新しながら完成へ進める公開形態です。紹介してもらった一度の機会と、その後に遊び続けられるようにする作業が重なっていました。開発者の講演資料「Success Through Marketability」
自作ゲームで試すなら、まず近いジャンルの配信を見て、視聴者が何に反応しているかを観察します。そのうえで、紹介を依頼する相手を選び、短い説明、実画面、試せる版へのリンクをまとめます。利用できる言語や対応環境も、相手が判断できるように伝えます。
一方、物語の結末を見ることが体験の中心なら、配信を見終わった人がどこに魅力を感じるかは別に考える必要があります。配信向けに見せる範囲も、自分の作品に合わせて選びます。
Shovel Knight:発売前の支援と、発売までの紹介を積み重ねた
『Shovel Knight』の例では、発売日より前に集まった関心を見てみます。開発元のYacht Club Gamesは、2013年にKickstarterで制作資金を募りました。Kickstarterは、企画に共感した人などから支援を集めるサービスです。キャンペーンには14,749人が支援し、支援総額は311,502米ドルになっています。当時のキャンペーンページ
その後の2014年8月5日付の振り返りで、開発元は、発売までの約1年間にイベントやメディアで紹介を重ねたこと、任天堂によるストア掲載や告知の支援もあったことを説明しています。発売初週には、Kickstarterの予約分を除いて約7万5千本を販売したと報告しています。開発元による発売後の振り返り
支援総額は制作の利益ではなく、支援者数も発売後の新規購入者数とは別です。また、初週の販売には複数の紹介経路が関わっており、Kickstarterだけで売れたと説明することはできません。
発売前から、制作を応援した人、イベントで見た人、記事で知った人との接点があり、そこへ発売の機会が来た。この流れから考えると、発売の告知に至るまでに何を伝えてきたかも見直す対象になります。
個人開発なら、無理なく続けられる紹介を予定してみます。例えば「遊びの中心が伝わる動画を出す」「試せる版を案内する」「寄せられた質問を紹介ページへ反映する」といった内容です。公開済みなら、更新した点や実際の遊び方を紹介する機会に置き換えられます。
ただし、この事例を読んで、すぐ資金募集を始める必要はありません。支援を募れば、約束した内容を制作し、進捗を伝える仕事も生じます。同社自身も、開発が予定を超え、資金面で苦しい時期があったと記録しています。自分が維持できる作業量に合わせて、接点の作り方を選びたいところです。
見てもらうきっかけと、遊んでもらう準備を組み合わせる
3作品を並べると、ユーザーと出会う場面と、その後に必要な準備を分けて考えられます。
| 参考にすること | 入口として用意するもの | その先で確かめること |
|---|---|---|
| 遊びが見える短い映像 | 自分が何をするゲームか伝わる実プレイ動画 | 紹介ページに作品の説明と入手方法があるか |
| 配信を通じた発見 | 作品に合う相手へ伝える、概要と試せる版 | 視聴者が遊べる言語・環境を用意できているか |
| 関心をつなぐ継続的な紹介 | 動画、試遊、更新などを知らせる予定 | 発売日や入手先を迷わず確認できるか |
この表の準備をすべて同時に進める必要はありません。第1回で考えた「どこで止まっているか」に合わせて、一つ選びます。
存在をほとんど知られていないなら、見せる場面と届け先から。興味は持たれているのに遊ばれていないなら、紹介ページや対応環境から。すでに少人数が遊んでくれているなら、その人がどこで知り、何を見て試したのかを聞く方法もあります。
今回扱ったのは、結果として成功した作品の記録です。同じ活動をしても、同じ成果になるとは限りません。使える時間、すでにいるファン、協力先、当時の媒体の状況などが違うためです。過去の販売数字を自分の目標にする前に、自分が確かめたい変化を決めます。
自分の作品で、次に試すことを一つ書き出す
例えば、紹介するための映像を作るなら、「今週、遊びの中心が伝わる短い動画を一本用意し、どんなゲームに見えるかを知人に聞く」と決められます。
反応を見るときは、動画への感想と、紹介ページへの訪問、ダウンロードや購入を区別します。アクセス数が少ない段階では、数字だけで決めず、作品の魅力がどう伝わったかという言葉も集めてみましょう。
| 決めること | 自分の作品でのメモ |
|---|---|
| 今、確かめたいこと | ____________ |
| 参考にする接点 | 短い映像/配信/継続的な紹介/その他 |
| 届けたい相手と、その人が見る場所 | ____________ |
| 今回用意するもの | ____________ |
| 用意するための作業時間と費用の上限 | ____________ |
| どんな反応を、いつ確認するか | ____________ |
一つ試したら、伝わったことと、まだ届いていない部分を記録します。次回の第3回:「誰でも使える」から、最初に届けたい相手を絞るでは、利用場面や今使っている代わりの手段から、自分の作品を選んでもらう理由を考えます。
第1回:公開したのに使ってもらえない。どこで止まっているのか?
マーケティングの考え方を、入門書で整理する
事例を読んで「誰に届けるか」「何を価値として伝えるか」を基礎から整理したくなったら、マーケティングの入門書を探す方法もあります。目次や試し読みで、顧客の理解、価値の伝え方、施策の振り返りを扱っているか確認してみてください。
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