実践ガイド

個人開発の「作る範囲」①:作りたいものが多すぎる。最初の完成形をどう決める?

個人開発の作る範囲 第1回「最初の完成形を決める」

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作り始めたゲームに、新しい街も、装備も、会話も入れたくなる。アプリなら、便利な設定や共有機能が次々と浮かぶ。アイデアが増えるのは楽しい一方、どこまで作れば公開できるのかが見えなくなることがあります。

そんなときは、機能を削る前に、今回完成させたい体験と、その終点を一文で決めてみましょう。その体験に必要なものを並べれば、今作ることと、後で考えることを分けやすくなります。

この連載では、ゲームやアプリを一人や小さなチームで作る人に向けて、制作範囲の決め方を考えます。第1回の目的は、自分の作品の「最初の完成形」を書き出すことです。

体験と終点を一文にする

「探索ゲームを作る」だけでは、地図の広さも、いつ完成とするかも決まりません。例えば、次のように書いてみます。

プレイヤーが小さな屋敷を探索し、手掛かりを使って一つの謎を解き、結末を見る。

これなら、屋敷の入口から結末までを一通り遊べることが完成の目安になります。屋敷に部屋を何十個も用意するか、別の謎を加えるかは、その体験に必要かを見て判断できます。

画像の幅をそろえるツールなら、「画像を複数選び、指定した幅に変換し、結果を保存する」も一例です。どちらも説明用の架空の作品で、実際の制作実績ではありません。

一文は、誰が何をして、どこまで到達するかを書ければ十分です。短く書いた後も、対象の環境で動くことや、保存するデータを壊さないことなど、安心して使うための条件は別に残しておきます。

『A Short Hike』の開発から、規模を考える

『A Short Hike』の開発者Adam Robinson-YuによるGDC講演の概要には、大きな企画をいったん後回しにして新しい試作に取り組み、それが本作になったことが紹介されています。概要によると、初期リリースは4か月の期限内にまとめられました。講演では、限られた条件の中での表現、レベルデザイン、文章などを扱うと案内されています。GDC講演概要

この事例から、自分の企画でも「今の時間と人数で形にできる作品は何か」と問い直せます。ただし、講演概要だけでは個々の機能をどう選んだかまでは分かりません。4か月を誰にでも当てはまる目標期間や成功の条件として扱うこともできません。

完成形に必要なものを、端から端まで並べる

先ほどの架空の探索ゲームと画像ツールで、最初の完成形を考えてみます。

確かめること 探索ゲーム 画像ツール
中心となる体験 手掛かりを使って謎を一つ解く 複数の画像の幅をそろえる
始まりから終わりまで 開始→探索→謎解き→結末 選択→幅の指定→変換→保存→保存結果の確認
体験に必要なもの 移動、調べる操作、手掛かり、仕掛け、結末 画像の選択、幅の指定、変換、保存
使うために必要な確認 開始から結末まで進めるか、操作が分かるか 元画像の扱い、上書き防止、失敗時の案内、保存結果
後で検討する候補 別の屋敷、追加の謎 共有機能、変換設定の追加

「後で検討」は、絶対に不要という意味ではありません。例えば共有機能がなければ想定する相手の目的を果たせないなら、最初の完成形に入れる判断もあります。

一方で、ゲームなら開始できても結末に到達できなければ、上の完成形は満たしていません。ツールでも、変換ができるだけで保存結果を確認できなければ、作り手が想定した流れは終わりません。画面や機能を別々に数える前に、最初から最後までつながるかを見ます。

追加案は消さずに、今回の枠から分ける

作業中に新しい案が浮かんだら、その場で実装せず、名前と狙いを書き留めておきます。続けて、次の三つを確認します。

  1. 今回の体験を終えるために、その機能は必要か。
  2. 作らない場合、利用者が困ることや失うものは何か。
  3. 追加すると、実装だけでなく、画面・素材・動作確認もどれだけ増えるか。

例えば追加の謎は遊びを豊かにするかもしれません。ただ、最初の謎と結末がまだつながっていないなら、先に一周できる形を作る選択があります。実際に必要な作業時間は作品や経験によって変わるため、小さな作業を試した結果から見積もり直します。

安全性や利用に必要な情報を、単に時間が足りないからと省く判断は別です。必要な条件を満たせない場合は、公開対象を狭める、公開を遅らせるなどの選択肢もあります。

自分の「最初の完成形」を書いてみる

項目 自分の作品についてのメモ
誰に、どんな体験をしてほしいか ________
始まりから終わりまでの流れ ________
今回必ず作るもの ________
対応環境と、安全に使うための条件 ________
後で検討する案と、その理由 ________
完成と判断するために、実際に確かめること ________

完成形は、最初に決めたまま変えてはいけないものではありません。作ってみて必要な作業が増えたら、体験を守りながら範囲や予定を見直します。逆に、まだ動くものがない段階では、書いた計画だけで完成までの期間を断定しないでおきましょう。

起動後に作品の面白さや便利さをどう伝えるかは、ゲームとアプリの最初の体験 第1回で扱っています。今回決めた完成形のうち、初めて触る人にどの体験から届けるかを考えるときに役立ちます。

作る範囲やゲームデザインを本で学びたい方へ

制作の進め方やゲームデザインの本を選ぶときは、対象となる経験や作品の規模、企画から完成までのどの段階を扱うかを目次で確認してみてください。

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事例は2026年11月4日にGDCの講演概要を確認しました。講演全編の視聴や作品の実機検証は行っていません。


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