はじめに
のんびり遊べる生活系や、お店・街を育てる経営系は、長く遊ばれる作品が多いジャンルです。今回は、Steamのレビューを集計している第三者サイトSteam250(Steam公式ではありません)の、life_sim、management、resource_managementのタグのページに載った作品から候補を選びました。工場自動化系の代表作(Factorio、Satisfactory、Dyson Sphere Programなど)は、これまでの記事で扱ったため、この記事の20本には入っていません。下の「既出の関連作」で、各作品のエンジンだけ紹介します。
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選定方法
- 2026年10月23日時点のSteam250の数値で、全言語のレビューが500件以上、好評率が93%以上
- 開発したスタジオが個人〜中小規模の作品。発売元(パブリッシャー)が大手でも、開発したスタジオが小〜中規模なら対象です。開発元が大手や大規模スタジオ、大手企業の傘下のものは除外しました(DAVE THE DIVERなど)。Euro Truck Simulator 2のSCS Softwareは、公式サイトで従業員400人以上と公表しているため、小〜中規模の基準から外れる例外です。長期運営と自社エンジンの参考として含めました
- これまでの記事で扱ったタイトルは除外(下の「既出の関連作」を参照)
- 同じ開発者の続編や、別作品は除外(shapez 2、Mini Motorwaysなど)
- エンジンの確認基準: Wikipedia、開発元の発言・開発元側のページ、または独立した複数の二次情報のうち、いずれかがあること。1件だけのまとめサイトや、記事のタグ表示だけのものは、確認とみなしませんでした
20本は、3つのタグのページから、筆者が選びました。life_simのページには、このほかにも基準を満たす作品があります(Crime Scene Cleaner、Wobbly Life、Mon Bazou、Volcano Princess、Supermarket Together、VPet-Simulatorなど)。これらは、調査の範囲を絞るために今回は対象にしませんでした。Stardew ValleyとMiSideは、これまでの記事で扱い済みです。
最初に20本の候補を挙げ、次の6本は上の基準を満たす資料が見つからなかったため、載せていません。
- Recettear: An Item Shop’s Tale: Wikipediaに、エンジンの記載がありませんでした
- The Farmer Was Replaced: 記事に「Unity」というタグがあるだけで、開発元の発言がありませんでした
- Software Inc.、Dressmaker: ゲーム情報サイト1件だけの記載で、確認とみなしませんでした
- Shelldiver、Digseum: 開発元の記事を読みましたが、エンジン名は書かれていませんでした
Wobbledogsは、レビューサイトindie-hiveと作品データベースPlayTrackerの2つにUnityと記載されています。開発元の発言ではないため、その点を踏まえて読みます。
用語のメモ
- ゲームエンジン: ゲームを動かす土台になるソフト。画面表示、入力、当たり判定などをまとめて提供します。
- 自社エンジン: 既製のエンジンを使わず、開発会社が自分たちで作ったエンジンです。
- Unity: 2D・3Dのゲームを作れる、広く使われている汎用ゲームエンジンです。
- GameMaker: 2Dゲームの制作に向いたエンジン。専用言語GMLやビジュアルツールを使えます。
- Yarn Spinner: 会話や物語の部分を書くための道具で、Unityなどと組み合わせて使います。
結論
個人〜中小規模のスタジオによる作品を中心に、例外としてSCS Softwareの作品も含む、Steamで高評価ののんびり/生活・経営系20タイトルのうち、使用エンジンを本記事の基準で確認できたのは14本でした。
- Unity: 12本(Slime Rancher、The Planet Crafter、Spiritfarer、Potion Craft、Unpacking、PlateUp!、Parkitect、Minami Lane、Rusty’s Retirement、Placid Plastic Duck Simulator、Tiny Bookshop、Wobbledogs)
- 自社エンジン: 2本(Euro Truck Simulator 2、Fields of Mistria)
この14本の範囲では、Unityが約86%(12/14)です。ただし、残りの6本は「資料が存在しない」という意味ではなく、今回の確認基準を満たす資料を見つけられなかった作品です。確認できた作品だけで集計しているため、「このジャンル全体でUnityが86%」とは言えません。
Placid Plastic Duck SimulatorとTiny Bookshopは開発元側のページ、Euro Truck Simulator 2とFields of Mistriaは開発元公式の資料で確認できます。Wobbledogsは独立した2つの二次情報を根拠にしています。
14タイトルのエンジン一覧
| タイトル | 開発元(規模) | 使用エンジン | 主な根拠 |
|---|---|---|---|
| Slime Rancher | Monomi Park(米国のインディー) | Unity | Wikipedia(インフォボックス) |
| The Planet Crafter | Miju Games(2人で始め、7人に) | Unity | Wikipedia |
| Spiritfarer | Thunder Lotus Games | Unity | Wikipedia(インフォボックス) |
| Potion Craft | niceplay games(ロシアの個人開発者が設立) | Unity | Wikipedia |
| Unpacking | Witch Beam(オーストラリア・ブリスベン) | Unity | Wikipedia(インフォボックス) |
| PlateUp! | It’s Happening(1人) | Unity | Wikipedia |
| Parkitect | Texel Raptor | Unity | Wikipedia(インフォボックス) |
| Minami Lane | 2人が中心、音楽などは協力者あり | Unity | Wikipedia |
| Rusty’s Retirement | Mister Morris Games(Jordan Morris氏) | Unity | Wikipedia |
| Placid Plastic Duck Simulator | turbolento games | Unity | 開発元のitch.ioページ(Made with: Unity) |
| Tiny Bookshop | neoludic games(ドイツ・ケルンの小さなスタジオ) | Unity | Yarn Spinnerの導入事例ページ(開発元の発言) |
| Wobbledogs | Animal Uprising | Unity | 二次情報2件(indie-hive、PlayTracker) |
| Euro Truck Simulator 2 | SCS Software | 自社エンジン「Prism3D」 | SCS Software公式 |
| Fields of Mistria | NPC Studio(シカゴ) | 自社エンジン「maybe」(GameMakerから移行) | 開発元公式ブログ/公式SDK |
注意: 作品ごとの開発規模は、資料に書かれていた範囲のみ載せています。リリース年の列は、Steam250の一部のページにしか年の表示がなく、全作品を同じ基準でそろえられなかったため付けていません。
既出の関連作と合わせると
このジャンルの高評価作のうち、次の8本は、これまでの記事で扱ったため、この記事の集計から外しています。参考までに、各作品のエンジンを並べます(「サバイバル編」「ストラテジー・シミュレーション編」より)。
| タイトル | エンジン | 扱った記事 |
|---|---|---|
| Factorio | 自社エンジン(C++) | サバイバル編 |
| RimWorld | Unity(1.7の不安定版ベータは自社エンジン「Waylith Engine」に移行済み) | サバイバル編 |
| Stardew Valley | XNA → 2021年にMonoGameへ移行 | サバイバル編 |
| Satisfactory | Unreal Engine | サバイバル編 |
| Oxygen Not Included | Unity | ストラテジー・シミュレーション編 |
| Dyson Sphere Program | Unity | ストラテジー・シミュレーション編 |
| Timberborn | Unity | ストラテジー・シミュレーション編 |
| Against the Storm | Unity | ストラテジー・シミュレーション編 |
この8本を足した22本では、通常版/現行版ベースで数えると、Unityが17本(約77%)、自社エンジンが3本(Euro Truck Simulator 2、Fields of Mistria、Factorio)、MonoGameが1本、Unreal Engineが1本です。RimWorldは当時の通常版ではUnityですが、1.7の不安定版ベータは自社エンジン「Waylith Engine」に移行済みです。工場系の代表作のFactorioと、生活系の代表作のStardew ValleyはUnityではありません。
補足:
- XNAは、かつてMicrosoftが提供していたC#向けの開発キット、MonoGameは、それと互換性のあるオープンソースの部品です。
- 「不安定版ベータ」は、正式版の前に公開される試験版のことです。
- 基準の違い: Oxygen Not IncludedのKleiは、2021年1月にTencentの子会社になっています(同社のWikipediaの項より)。本記事の「大手企業の傘下は除外」とは基準が異なりますが、これは、ONIの扱いを決めた時点(以前の記事)で、小〜中規模のスタジオとして扱っていたためです。
- 関連する記事: サバイバル・クラフト編、ストラテジー・シミュレーション編。
Unity組(12本)
生活・クラフト系: Slime Rancher / The Planet Crafter / Spiritfarer
- Slime Rancher: Monomi Parkの作品で、WikipediaのインフォボックスにUnityと記載されています。アーリーアクセスは2016年1月、正式版は2017年8月に出ました。
- The Planet Crafter: Miju Gamesの作品で、Wikipediaに「Unityを使っている」とあります。2人のプロジェクトとして始まり、のちに7人のチームに広がりました。
- Spiritfarer: Thunder Lotus Gamesの作品で、WikipediaのインフォボックスにUnityと記載されています。ディレクター、プログラマー、アーティスト、ライターなど、小〜中規模のチームです。
お店・経営系: Potion Craft / PlateUp! / Parkitect / Minami Lane / Tiny Bookshop / Rusty’s Retirement
- Potion Craft: niceplay gamesの作品で、WikipediaにUnityと記載されています。ロシアのMikhail Chuprakov氏が設立したスタジオです。
- PlateUp!: Wikipediaによると、1人のスタジオ(It’s Happening、Alastair Janse van Rensburg氏)の作品で、エンジンはUnityです。
- Parkitect: Texel Raptorの作品で、WikipediaのインフォボックスにUnityと記載されています。2014年8月にKickstarterを開始し、約6.4万ドル以上を集め、その後2年間のアーリーアクセスを経ています。
- Minami Lane: Wikipediaによると、約6か月でUnityで開発されました。Doot氏とBlibloop氏が中心となり、音楽などでZakku氏も参加しています。
- Tiny Bookshop: ドイツのneoludic gamesの作品です。Yarn Spinnerの導入事例のページに「Powered by Yarn Spinner for Unity」とあり、開発元が「物語とカットシーンの土台にYarn Spinnerを使っている」と話しています。ページがエンジンそのものについて明言しているわけではなく、Unity用の道具の導入事例という形での確認です。
- Rusty’s Retirement: Wikipediaに「Morrisは、Unityを使ってゲームを開発した」とあります。開発元のMister Morris Gamesは、Jordan Morris氏個人のブランドとされています。
そのほか: Unpacking / Placid Plastic Duck Simulator / Wobbledogs
- Unpacking: オーストラリアのWitch Beamの作品で、WikipediaのインフォボックスにUnityと記載されています。
- Placid Plastic Duck Simulator: turbolento gamesの作品です。開発元のitch.ioページの「Made with」欄に「Unity, Blender」とあります。Blenderは3Dモデルを作るソフトです。チームの人数は書かれていません。
- Wobbledogs: Animal Uprisingの作品で、Wikipediaには「Tom Astle氏が作った」とあります(エンジンの記載はなし)。エンジンは、レビューサイトindie-hiveと、作品データベースPlayTrackerの2つが、Unityと記載しています。どちらも開発元の発言ではありません。
自社エンジン組(2本)
Euro Truck Simulator 2
チェコのSCS Softwareの作品で、SCS Software公式のTechnologyページでは、Euro Truck Simulator 2が自社開発のPrism3D Engineで動作していると説明されています。Prism3Dは同社が社内で開発・利用しているゲームエンジンです。同社の公式サイトは従業員400人以上と公表しています。これは現在の掲載人数であり、2012年発売時の制作チームの人数を示すものではありません。
Fields of Mistria
シカゴのNPC Studioの、最初のゲームです。開発元の公式ブログでは、2026年7月のv0.16.2で自社の内部ゲームエンジンへ移行したことが説明されています。さらに、NPC Studio公式GitHubのSDK資料では、そのエンジン名が「maybe」と記載されています。開発元のリードプログラマーJonathan Spira氏は、2026年9月のRustConf登壇概要で、開発時と実行時の両方でかなりの量のRustを使っているとも説明しています。なお、Steam250の集計には、移行前のGameMaker時代に投稿されたレビューも含まれます。
このジャンルから見えてくること
ここからは筆者の見解です。以下は、エンジンを確認できた14本と、既出の8本を合わせた22本の範囲での傾向です。
- Unityが圧倒的に多い。 22本のうち17本がUnityです。のんびり系・経営系のように、3Dや2Dの見た目を問わず、画面の中身を自由に組めるジャンルで強いようです
- 長く遊ばれる作品は、エンジンを変えることがある。 Stardew Valley(XNAからMonoGame)、Fields of Mistria(GameMakerから自社エンジン「maybe」)、RimWorld(Unity版を継続しつつ、1.7の不安定版ベータでは自社エンジンへ移行済み)など、発売後に土台を入れ替える例が複数あります
- 自社エンジンは、長く運営する作品に見える。 Factorioのような工場系や、Euro Truck Simulator 2のような車の運転系では、長く開発を続ける前提で、自社エンジンを選んでいるようにも見えますが、これは筆者の推測です
実際に学び始めるなら
ここからは学習導線です。記事で紹介した作品と同じエンジンを自分でも触ってみたい場合、動画講座で画面を見ながら進める方法もあります。
- Unityを学ぶ: 今回確認できた14作品のうち12作品で使われています。生活シミュレーション、経営、クラフト、街づくりなど幅広い作品で採用例があります。
- Unreal Engineを学ぶ: 既出の関連作ではSatisfactoryがUnreal Engineを使っています。3D空間や大規模な見た目を重視する経営・工場系ゲームを作りたい場合の候補です。
※Euro Truck Simulator 2やFields of Mistriaのように、自社エンジンを使う例もありますが、初心者が最初から自作エンジンを選ぶ必要はありません。まずは既存のゲームエンジンで、遊びの核を小さく試す方が現実的です。
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個人開発者への示唆
ここからは筆者の見解です。お店や経営のゲームには、Unityを使った個人開発の例(PlateUp!、Rusty’s Retirement)や少人数による例(Minami Lane)があります。遊びの中身(客の動かし方、仕入れ、注文のさばき方)をどう組むかに時間をかける作品が多く、エンジンの選び方より、遊びの核を決めることが重要に見えます。
※使用エンジンは、Wikipedia、開発元公式ページ、開発元側の導入事例、独立した複数の二次情報などをもとにまとめています。Euro Truck Simulator 2とFields of Mistriaは開発元公式の資料、Placid Plastic Duck SimulatorとTiny Bookshopは開発元側のページ、Wobbledogsは独立した2つの二次情報を根拠にしています。載せていない6本は、本記事の確認基準を満たす資料が見つからなかったものです。Steamの評価とレビュー数は、2026年10月23日時点の、全言語を対象にしたSteam250の集計です。Steam250は第三者の集計サイトです。公開前に最新の情報をご確認ください。
参考資料
- Steam250: Life Sim
- Steam250: Management
- Steam250: Resource Management
- Wikipedia: Slime Rancher
- Wikipedia: The Planet Crafter
- Wikipedia: Spiritfarer
- Wikipedia: Potion Craft
- Wikipedia: Unpacking
- Wikipedia: PlateUp!
- Wikipedia: Parkitect
- Wikipedia: Minami Lane
- Wikipedia: Rusty’s Retirement
- Placid Plastic Duck Simulator(開発元のitch.ioページ)
- Yarn Spinner: Tiny Bookshop
- Wikipedia: Euro Truck Simulator 2
- Wikipedia: Fields of Mistria
- RustConf 2026: Oxidizing Fields of Mistria(登壇概要)
- Wikipedia: Wobbledogs
- Wobbledogs(indie-hive)
- Wobbledogs(PlayTracker)
- Wikipedia: Klei Entertainment
- SCS Software: Technology – Prism3D
- Fields of Mistria 公式ブログ
- NPC Studio公式GitHub: mistria-sdk / maybe.md
