エンジン比較

Unityが約半数、でも古参はC/C++ — Steam高評価ストラテジー/タワーディフェンス/シミュレーションから選んだ17タイトルの使用エンジン

Steam高評価ストラテジー・タワーディフェンス・シミュレーション17作品の使用エンジンを比較する記事のアイキャッチ

この記事は、Steamで高く評価されているゲームの「使用エンジン」をジャンル別に調べる企画の一つです。

はじめに

ストラテジー、タワーディフェンス、経営シミュレーションには、仕組みや意思決定の面白さを重視した作品があります。そのため、1人や少人数の開発者が、長い年月をかけて育てた作品も多くあります。

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選び方

Steam上のレビューを集計するサイトSteam250(Steamストアの評価ラベルとは別の、第三者による集計)を使い、2026年10月23日時点で、全言語のレビューが500件以上、かつ好評率が93%以上のタイトルを対象にしました。strategy、tower_defense、management の3つのタグのページから、筆者が候補を選び、使用エンジンを示す資料が確認できた17本を載せています。この基準を満たす作品は他にもあり、17本が全体の統計ではありません。

  • 除外したもの: 大手の発売元(パブリッシャー、ゲームを販売する会社)や、従業員が100人を超えるなど大規模なスタジオのタイトル(Baldur’s Gate 3、Civilization、Age of Empires、Total War、Cities: Skylines、Planet Zooなど)、これまでの記事で扱った作品、同じ開発元の続編や姉妹作
  • 外したもの: Mount & Blade: Warbandは、基準は満たしますが、開発元のTaleWorldsが従業員131人(2020年、Wikipedia)と規模が大きく、Warband自体のエンジンを示す公式の資料も見つかりませんでした。TaleWorldsの公式記事では、続編のBannerlordのエンジンは「完全に自社で作った」と説明されています
  • 開発元の規模: Ninja Kiwi、Klei、Ironhideなど、規模を資料から確認できなかった開発元もあります

用語

  • ゲームエンジン: 描画、物理演算、音、入力など、ゲームに共通する部分をまとめて提供する開発用ソフトです
  • Unity: 2D・3Dのゲームを作れる、広く使われている汎用のゲームエンジンです
  • Godot: 無料で使える、オープンソースのゲームエンジンです
  • フレームワーク / ライブラリ: ゲームエンジンほど多機能ではなく、画面表示や入力など、一部の機能だけを提供する部品です
  • オープンソース: ソースコードが公開され、ライセンスの条件に従って利用や改良、再配布ができる形のことです
  • C / C++: 処理の速さが求められるゲームやエンジンの開発によく使われるプログラミング言語です

調べた結果(先にまとめ)

筆者が選んだ17タイトルのうち、Unityで作られた作品は9本と最多で、約半数でした。残りは、C/C++中心の独自コード/軽量ライブラリ構成が3本(Dwarf Fortress、OpenTTD、FTL)、Web技術を使う作品が2本(Cookie Clicker、Game Dev Tycoon)、JavaやHaxeのフレームワークが2本(Mindustry、Defender’s Quest)、Godotが1本(Your Only Move Is HUSTLE)です。Kingdom Rushのように、Flashで作った作品を、Steam版ではUnityで作り直した例も見つかりました。

エンジン別に見る17タイトル一覧

タイトル 開発元 使用エンジン 根拠
Schedule I TVGS Unity SteamDB、Wikipedia
Bloons TD 6 Ninja Kiwi Unity Wikipedia
Oxygen Not Included Klei Entertainment Unity Wikipedia
Dyson Sphere Program Youthcat Studio Unity Wikipediaのみ
Totally Accurate Battle Simulator Landfall Unity Wikipedia
Timberborn Mechanistry Unity Unity公式の事例記事
Against the Storm Eremite Games Unity 開発者の発言(Game Developer)
Stacklands Sokpop Collective Unity 開発者インタビュー
Kingdom Rush Ironhide Game Studio Unity(Steam版。元はFlash) 開発元の公式記事
Dwarf Fortress Bay 12 Games CとC++(独自のコード) 開発者のインタビュー
OpenTTD OpenTTD Team C、C++など(オープンソース) Wikipedia
FTL: Faster Than Light Subset Games C++とSDL(エンジンを自作かは不明) 開発者の発言(Game Developer)
Cookie Clicker Orteil JavaScript + Electron(Steam版) Game Developer、SteamDB
Game Dev Tycoon Greenheart Games node-webkit / NW.js(PC版)、Unity(スマホ版) 開発元のSteam告知、Wikipedia
Mindustry Anuken Arc(libGDXをもとにしたJava製フレームワーク) GitHubのREADME
Defender’s Quest DX Level Up Labs Haxe(HaxeFlixel) Haxe公式ブログ
Your Only Move Is HUSTLE Ivysly Godot SteamDB、itch.io作者ページ

Unity組 — 9本、少人数から中堅まで

少人数のチーム

  • Dyson Sphere Program: 中国・重慶のYouthcat Studioの作品です。Wikipediaによると、開発者は創業者2人と雇った3人の計5人で(Sixth Toneの記事も「5人のチーム」と伝えています)、基本情報欄にUnityと書かれています。Unityの根拠は、Wikipediaのみです
  • Stacklands: オランダのSokpop Collectiveの作品です。リードデザイナー兼プログラマーのAran Koning氏はインタビューでUnityを使ったと述べています
  • Against the Storm: ポーランドのEremite Gamesの作品です。Game Developerのインタビューで、開発者のMichał Ogłoziński氏が「ゲームはUnityエンジンで作られている」と述べ、5人のチームで開発していると語っています
  • Timberborn: ポーランドのMechanistryの作品です。Unityの公式の事例記事に、「Unityを選んだ」とあり、プログラマーのPaweł Duda氏は、チームがC#に慣れていることも理由に挙げています。Unityの2025年公開事例では、チームは13人と紹介されています
  • Schedule I: オーストラリアのTVGSの作品で、Wikipediaにエンジンとして Unity と記載されています。解説ブログでも、Unityで作られた1人の開発者の作品として紹介されていますが、開発者本人の発言は確認できていません
  • Totally Accurate Battle Simulator: Landfallの作品で、Wikipediaによると「Unityを使って開発」され、スウェーデンの城で行われた1週間のゲームジャムで作られたのが始まりです。ゲームジャムとは、短い期間でゲームを作るイベントのことです

既存のスタジオ

  • Bloons TD 6: Ninja Kiwiの作品で、Wikipediaに「Unityで作られた」とあります
  • Oxygen Not Included: バンクーバーのKlei Entertainmentの作品で、WikipediaにUnityと書かれています

Flashから、Unityへ — Kingdom Rush

Wikipediaによると、初代のKingdom Rushは、Flash(かつてブラウザゲームに広く使われた技術)版がゲームサイトで高い評価を得ました。Ironhide Game Studioの公式の記事では、Flash版はAS3(Flash向けのプログラミング言語)で書かれ、スマートフォン版はObjective-Cとcocos2dで作られ、Steam版はUnityとC#で作られたと説明されています。同じ作品でも、プラットフォームごとに技術が違う例です。

C/C++中心の独自コード組 — Dwarf Fortress、OpenTTD、FTL

Dwarf Fortress

Tarn AdamsとZach Adamsの兄弟のBay 12 Gamesが、2002年から開発を続けています。Stack Overflowのブログのインタビューで、Tarn Adams氏は、コードは「CとC++の組み合わせ」で、時間をかけて積み重なったものだと語っています。「エンジンの部分はOpenGLとSDLで処理している」とも述べています。OpenGLは画面表示、SDLは入力や画面などを扱う軽量なライブラリで、音はFMODというライブラリです。Wikipediaによると、コードは非公開で、開発には無料版のVisual Studio(Microsoftの開発ソフト)が使われています。Steam版は、Kitfox Gamesから発売されました。

OpenTTD

1995年のTransport Tycoon Deluxeを作り直した、オープンソースのゲームです。Wikipediaによると、GPL-2.0(一部の第三者モジュールを除く)で提供され、2004年に公開されました。開発元は有志のチーム(OpenTTD Team)です。使用言語はC、C++、Objective-C、Squirrel(ゲーム内の動きを書くための軽いスクリプト言語)で、2007年から段階的にC++へ書き換えられています。

FTL: Faster Than Light

2人のチーム、Subset Gamesの作品です。Game Developerの記事で、Matthew Davis氏は、SDLが移植に役立ち、C++で書いたと述べています。Justin Ma氏は、アニメーションなどの確認にGame Makerを使ったと述べています。自作のエンジンがあったかどうかは、記事に書かれていません。Wikipediaによると、Kickstarter(クラウドファンディング)で目標の20倍にあたる20万ドル以上を集めました。

Web技術の組 — Cookie Clicker、Game Dev Tycoon

  • Cookie Clicker: Orteilこと、フランスのJulien Thiennot氏が、2013年に「1晩で」書いたと、Wikipediaにあります。Game Developerの記事は、JavaScriptだけで動くゲームで、ブラウザが開いている間は動き続けると説明しています。Steam版は2021年にPlaysaurusから発売され、SteamDBではElectron Containerが使われていることが確認できます。Web版のJavaScriptを、Electronでデスクトップアプリとして動かす構成です
  • Game Dev Tycoon: Patrick KlugとDaniel Klugの兄弟のGreenheart Gamesの作品です。開発元のSteam告知では、PC版はnode-webkit(現在のNW.js)を使い、HTML5ゲームをデスクトップアプリとして動かしていると説明されています。Wikipediaでは、iOSとAndroid版はUnityとされています

JavaとHaxeのフレームワーク組 — Mindustry、Defender’s Quest

Mindustry

GitHubのREADMEによると、Anukenが作った「Arc」は、libGDX(Javaのゲーム開発ライブラリ)をもとにしたJava製のフレームワークで、Mindustryのためだけに作られたものです。デスクトップ向けの部分に、GLFW(ウィンドウや入力を扱うライブラリ)ではなくSDLを使うなど、libGDXから大きく変わっています。作者は「これで自分のゲームを作らないでほしい」とも書いています。

Defender’s Quest DX

Haxe(さまざまな環境向けに書き出せるプログラミング言語)のブログによると、Level Up LabsのLars Doucet氏は、Adobe AIR(Flashの技術をもとに、アプリを作る仕組み)が特にLinuxで問題を起こしていたことと、Adobeが将来の計画を示さなかったことを理由に、HaxeFlixel(Haxeで2Dゲームを作るためのフレームワーク)に移りました。

Godot組 — Your Only Move Is HUSTLE

Ivyslyの作品です。SteamDBでは技術情報としてGodot Engineが確認できます。また、itch.ioには作者Ivysly本人の作品ページがあります。作者の作品ページは開発元の確認に使えますが、エンジン名の根拠はSteamDBの技術情報であり、開発者本人の明言は確認できていません。

このジャンルから見えてくること

17本の範囲で言えることは、次のとおりです。他のジャンルとの数字の比較は、していません。

  • Unityは最多の9本。 少人数のチームから、既存のスタジオまで使われている。ただし、Wikipediaだけが根拠の作品も含む
  • C/C++で書かれた作品が3本。 Dwarf Fortress(2002年から開発)、OpenTTD、FTL。他の古い作品には、Web技術やHaxeなど、別の技術を使ったものもある
  • Flash時代の技術から移った例が、2つある。 Kingdom Rushは、Steam版をUnityで作り直した。Defender’s Questは、Adobe AIRからHaxeに移った
  • Web技術の作品が2本ある。 Cookie ClickerはJavaScriptをElectronで、Game Dev Tycoonはnode-webkit/NW.jsでデスクトップアプリとして動かしている

実際に学び始めるなら

ここからは学習導線です。記事で紹介した作品と同じエンジンを自分でも触ってみたい場合、動画講座で画面を見ながら進める方法もあります。

  • Unityを学ぶ: 今回の17作品では最多の9作品で使われています。タワーディフェンス、経営シミュレーション、工場系など幅広いジャンルで採用例があります。

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  • Godotを学ぶ: Your Only Move Is HUSTLEのように、個人開発の作品でも採用例があります。無料・オープンソースで使えるエンジンです。

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※Cookie ClickerやGame Dev Tycoonのように、JavaScriptやNW.js/ElectronなどのWeb技術を使う道もあります。Web制作の経験がある場合は、その知識を活かせる可能性があります。

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個人開発者への示唆

ここからは筆者の見解です。今回の17本の中には、Unityで作られた、少人数の高評価作が複数あります(Dyson Sphere Program、Against the Storm、Stacklandsなど)。一方で、Dwarf FortressやOpenTTDのように、C/C++で長年育て続けた作品も人気を保っています。

Kingdom Rushでは、複数機種向けに別々の実装を作る負担が生じました。Defender’s Questでは、既存技術の問題や将来への懸念を背景に基盤を移しました。技術を選ぶときは、今の作りやすさだけでなく、何年か先まで使えるかどうかも、考えておくとよさそうです。


※使用エンジンは、Wikipedia、Game Developerの記事、Unity公式の事例記事、Ironhide Game Studioの公式の記事、Stack Overflowのブログ、Haxe公式ブログ、GitHubのREADMEなどをもとにまとめています。Dyson Sphere ProgramはUnityの根拠がWikipediaのみ、Schedule Iは開発者本人の発言が未確認、FTLは自作のエンジンがあったかどうか不明です。Cookie ClickerはSteamDBでElectron、Your Only Move Is HUSTLEはSteamDBでGodot Engineを確認しています。Steamの評価とレビュー数は、2026年10月23日時点で、全期間・全言語を対象にしたSteam250の集計を使用しています。公開前に最新の情報をご確認ください。

参考資料

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