この記事は、Steamで高く評価されているゲームの「使用エンジン」をジャンル別に調べる企画の一つです。
はじめに
RPGは、物語、戦闘、成長、探索といった要素が多いジャンルですが、1人で作られた作品が高く評価された例も目立ちます。
※本記事にはアフィリエイトリンク(Udemy)が含まれます(PR)。
選び方
Steam上のレビューを集計するサイトSteam250(Steamストアの評価ラベルとは別の、第三者による集計)を使い、2026年10月22〜23日時点の表示で、全言語のレビューが500件以上、かつ好評率が93%以上のタイトルを対象にしました。jrpgは22日、rpgとturn-based_combatは23日の表示を使い、3つのタグのページから、筆者が候補を選び、使用エンジンを示す資料が確認できた15本を載せています。この基準を満たす作品は他にもあり、15本が全体の統計ではありません。
- 除外したもの: 大手の発売元(パブリッシャー、ゲームを販売する会社)や大規模スタジオのタイトル(Persona、Baldur’s Gate 3、Final Fantasy、Trailsなど)、これまでの記事で扱った作品、同じ開発元の続編や姉妹作(DELTARUNE、Finding Paradiseなど)
- 例外として入れたもの: Clair Obscur: Expedition 33は、開発元のSandfall Interactiveが約30人の規模で、小規模とは言えません。Unreal Engine 5の例として入れました
- 外したもの: 使用エンジンを示す資料が見つからなかった3本(Eternal Senia、Epic Battle Fantasy 5、Library Of Ruina)。出典が弱くても資料に記載があるものは、そのことを明記して載せています(LISA: The Painful)
これまでの記事で扱った作品の中にも、RPG Makerの作品があります(ホラー編のOMORI、OneShot、ミステリー/ビジュアルノベル編のThe Coffin of Andy and Leyley)。この記事の集計には含めていません。
用語
- ゲームエンジン: 描画、物理演算、音、入力など、ゲームに共通する部分をまとめて提供する開発用ソフトです
- RPG Maker: プログラミングをほとんどせずにRPGを作れる制作ツールです。XP、VX Ace、MVは世代の違いです
- GameMaker: 2Dゲームの制作に使われるエンジンです。専用言語GMLやビジュアルツールで動きを作れます
- 汎用エンジン / 自作エンジン: Unityのように、誰でも使える既製のものが汎用です。開発者自身が、そのゲーム向けに作る土台が自作です
- オープンソース: ソースコードが公開され、ライセンスの条件に従って利用や改良、再配布ができる形のことです
調べた結果(先にまとめ)
筆者が選んだ15タイトルのうち、RPG Makerで作られた作品は最多の7本でした(うち1本は出典が弱いため後述)。次に多いのはUnreal Engineの2本(UE4とUE5)で、GameMaker、Unity、Godotが各1本、そして独自・独自寄りの基盤を使う作品が3本です。筆者が選んだ15本の範囲では、比較的少ないプログラミングでも制作を始めやすいRPG Makerで作られた、高く評価されたRPGが目立ちました。
エンジン別に見る15タイトル一覧
| タイトル | 開発元 | 使用エンジン |
|---|---|---|
| To the Moon | Freebird Games | RPG Maker XP(Windows版) |
| Fear & Hunger | Miro Haverinen | RPG Maker MV |
| Hylics | Mason Lindroth | RPG Maker VX Ace |
| Rakuen | Laura Shigihara | RPG Maker XP(オリジナル版) |
| In Stars And Time | insertdisc5 | RPG Maker MV |
| Look Outside | Francis Coulombe | RPG Maker |
| LISA: The Painful | Dingaling Productions | RPG Maker(バージョン未確認) |
| Undertale | Toby Fox | GameMaker Studio |
| Bug Fables | Moonsprout Games | Unity |
| Cassette Beasts | Bytten Studio | Godot |
| Clair Obscur: Expedition 33 | Sandfall Interactive | Unreal Engine 5 |
| Wandering Sword | The Swordman Studio | Unreal Engine 4 |
| Kenshi | Lo-Fi Games | OGREベース(独自改造の範囲は不明) |
| Noita | Nolla Games | 自作(Falling Everything、C++) |
| ASTLIBRA Revision | KEIZO | C++で自作ツール(エンジン名は不明) |
RPG Maker組 — 7本
1人で作られた作品
- Fear & Hunger: フィンランドの開発者Miro Haverinen氏が、ほぼ1人で約2年かけて作りました。Wikipediaに「RPG Maker MVで作られた」とあります。成人向けの表現を含む作品です
- Hylics: Mason Lindroth氏の作品で、Wikipediaによると、RPG Maker VX Aceで約1年かけて作られました
- Rakuen: Laura Shigihara氏の作品です。Wikipediaによると、2017年のオリジナル版はRPG Maker XPで作られました。その後、Switch版とPC版向けに、Go言語の2Dゲーム用エンジンEbitengineを基盤とした新しいエンジンが開発されました。旧PC版も利用できると、ベータ発表時に案内されています
- In Stars And Time: insertdisc5ことAdrienne Bazir氏が1人で作りました。Wikipediaに「RPG Maker MVを使って開発した」とあり、発売元はArmor Games Studiosです
- Look Outside: カナダの開発者Francis Coulombe氏の作品です。Wikipediaによると、itch.ioの1か月間のゲームジャム(短期間でゲームを作るイベント)Hawktober Horrors 2024への出品が始まりで、注目を集めて、Devolver Digitalの支援で完全版が作られました。エンジンはRPG Makerです
小さなチームの作品
To the Moonは、Freebird Gamesの作品です。Wikipediaによると、Windows版はRPG Maker XPで作られました。モバイルとコンソール版はUnityで、LinuxとmacOS版は、RPG Maker XPを再現したオープンソースのMKXPで動いています。同じ作品でも、プラットフォームごとに基盤が違う例です。
LISA: The Painful(出典が弱い)
作者Austin Jorgensen氏はGame Developerのインタビューで、制作にRPG Makerを使ったと語っています。ただし、そのインタビューでは製品のバージョンを確認できません。Wikipediaの基本情報欄はVX Aceとしていますが、出典の確認が必要というタグが付いているため、バージョンは未確認です。Austin Jorgensen氏が、デザイン、アート、脚本、作曲を担当した作品です。
GameMaker組 — Undertale
Wikipediaによると、Undertaleは、GameMaker Studioで作られました。Toby Fox氏は、一部のアートを除いて、脚本と音楽を含むほぼすべてを1人で作っています。幼い頃に兄弟とRPG Maker 2000でRPGを作っていたという話も紹介されています。コンソール版は、日本のローカライズ会社(ゲームを他の言語や地域向けに翻訳・調整する会社)8-4が担当しました。
汎用エンジン組 — Unity、Godot、Unreal Engine
Bug Fables(Unity)
パナマのMoonsprout Gamesの作品で、Wikipediaに「Unityで開発された」とあります。
Cassette Beasts(Godot)
2人のチーム、Bytten Studioの作品です。Godot公式のショーケースの記事によると、開発者のTom氏は、作業の効率が最優先事項のひとつで、30時間以上の内容があるオープンワールドRPGを、2人で作れたのはGodotのおかげだと語っています。試したエンジンはいくつかあったそうですが、前に使っていたエンジンの名前は明かされていません。
Clair Obscur: Expedition 33(Unreal Engine 5)
Wikipediaによると、開発は当初Unreal Engine 4で始まり、レンダリングとアニメーションの改善を理由に、Unreal Engine 5へ切り替えられました。開発元によると、取材時のコアチームは30人未満でした。制作には外部の協力者も参加しており、人数を作品全体の参加者数と同一視することはできません。
Wandering Sword(Unreal Engine 4)
Steamストアの説明文に、「Unreal Engine 4を使って、ピクセルアートの伝統的なグラフィックスを描いている」とあります。開発元はThe Swordman Studioで、発売元はSpiral Up Gamesです。Steam Deck HQのインタビューによると、チームは3人で始まり、13人まで増えたそうです。ドット絵調の2D風の見た目でも、エンジンは3D向けのUnreal Engineという例です。
独自・独自寄りの基盤 — Kenshi、Noita、ASTLIBRA Revision
3本のうち、エンジンを自作したと明言されているのはNoitaです。KenshiはOGREベースで独自改造の範囲が不明、ASTLIBRA RevisionはC++で自作ツールを使っているものの、エンジン名は確認できていません。
Noita
Game Developerの記事で、Petri Purho氏が「Falling Everythingという自作のエンジンがある」と述べています。エンジンはC++で書かれ、いくつかの外部ライブラリを使っているそうです。3人で作られた作品です。
Kenshi
Wikipediaの基本情報欄にはOGREと書かれています。開発者Chris Hunt氏によると、最初に選んだ別のエンジンの開発が止まったため、Ogreに切り替えました。独自改造の範囲は確認できていません。Chris Hunt氏が主に1人で作り、2013年に小さなチームを雇いました。開発期間は、Wikipediaでは12年とされていますが、引用された記事の題名は8年と食い違っています。
ASTLIBRA Revision
日本の開発者KEIZO氏が1人で作った作品です。Wikipediaによると、開発期間は16年とされていますが、引用された記事の題名は14年と食い違っています。RPGSiteのインタビューで、KEIZO氏は、Visual Basic(初心者向けのプログラミング言語)から始めて、処理速度を理由にC++に落ち着き、ツールはすべて自分で作ったと語っています。インタビューにはエンジンの名前が出ていないので、表では「エンジン名は不明」としました。
このジャンルから見えてくること
15本の範囲で言えることは、次のとおりです。他のジャンルとの数字の比較は、していません。
- RPG Makerが最多。 今回選んだ7本のうち5本は、主に1人の開発者が制作した事例として紹介されている。音楽や移植などに他者が関わる場合もあり、LISAは出典が弱い
- プラットフォームごとに基盤が違う例がある。 To the Moon(Windows版はRPG Maker XP、モバイル/コンソール版はUnity)やRakuen(Switch版はEbitengine)
- 汎用エンジンも使われている。 Unreal Engineが2本(UE4とUE5)、Unity、Godotが各1本
- 独自・独自寄りの基盤は3本。 Noitaは自作エンジンと明言されている。KenshiはOGREベースで独自改造の範囲は不明、ASTLIBRAはC++で自作ツールを作ったと語られている。2人以上のチームもあれば、1人の開発者もいる
実際に学び始めるなら
ここからは学習導線です。記事で紹介した作品と同じエンジンを自分でも触ってみたい場合、動画講座で画面を見ながら進める方法もあります。
- Unityを学ぶ: Bug Fablesのように、2D表現を活かしたRPGでも使われています。2D・3Dの両方に対応する汎用エンジンです。
- Unreal Engineを学ぶ: Clair Obscur: Expedition 33やWandering Swordのように、3D表現や演出を重視するRPGで使われています。
- Godotを学ぶ: Cassette Beastsのように、小規模チームでも大きなRPGを作った例があります。
※RPG Makerは、比較的少ないプログラミングでも制作を始めやすいツールです。まずゲームの仕組みを形にしたい場合は、RPG Maker系の制作ツールから始める方法もあります。
※リンク先の講座内容・価格・セール状況は変わる場合があります。受講前に最新情報をご確認ください。
個人開発者への示唆
ここからは筆者の見解です。RPGは、1人でも高く評価された作品を生めるジャンルで、制作ツールを選ぶ道が現実的な入口になっているように見えます。RPG Makerで作った作品が、その後ほかのエンジンに載せ替えられた例(To the Moon、Rakuen)もあり、最初に使うツールが最後まで決まりではない点も、参考になります。
一方で、KenshiやASTLIBRAには長い開発期間を伝える資料がありますが、年数には資料間の違いがあります。その長さを独自基盤だけの影響と断定することもできません。
※使用エンジンは、Wikipedia、Steamストアの説明文、Game Developerの記事、Godot公式のショーケース、RPGSiteのインタビューなどをもとにまとめています。LISA: The Painful(出典の確認が必要な記載)は出典が弱く、ASTLIBRA Revision(エンジン名は不明)とKenshi(自作かは不明)は、断定を避けています。Steamの評価とレビュー数は、全期間・全言語を対象にしたSteam250の集計で、rpgとturn-based_combatのページは2026年10月23日時点、jrpgのページは2026年10月22日付の表示でした。公開前に最新の情報をご確認ください。
参考資料
- Steam250: JRPG
- Steam250: RPG
- Steam250: Turn-Based Combat
- Wikipedia: Undertale
- Wikipedia: To the Moon
- Wikipedia: Fear & Hunger
- Wikipedia: Lisa: The Painful / Game Developer: 作者インタビュー
- Wikipedia: Hylics
- Wikipedia: Rakuen
- Wikipedia: In Stars and Time
- Wikipedia: Look Outside
- Wikipedia: Bug Fables
- Godot Showcase: Cassette Beasts
- Wikipedia: Clair Obscur: Expedition 33
- Steam: Wandering Sword
- Steam Deck HQ: Wandering Sword interview
- Wikipedia: Kenshi
- Game Developer: Road to the IGF, Nolla Games’ Noita
- Wikipedia: Astlibra Revision
- RPGSite: An interview with KEIZO, the creator of ASTLIBRA Revision
- Wikipedia: Omori
