エンジン比較

意外と多様? Steamの人気ローグライク/ローグライトタイトルを支える使用エンジン10選

Steam人気ローグライク・ローグライト10作品の使用エンジンを比較する記事のアイキャッチ

はじめに

「人気インディーゲームはだいたいUnityで作られている」——そんなイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。

この記事は、Steamで高く評価されているゲームの「使用エンジン」をジャンル別に調べる企画の一つです。

たしかにUnityは個人開発者にとって定番の選択肢です。今回選んだSteamのローグライク/ローグライト系10作品には、独自エンジンや軽量フレームワークなど、Unity以外の採用例も含まれていました。この選定結果は、Steam全体の市場シェアを示すものではありません。

今回は、Steamで「非常に好評」以上の評価かつレビュー数500件以上を獲得している作品のうち、個人〜中小規模のスタジオが開発したローグライク/ローグライト系タイトルを中心に10本を選び、それぞれの使用エンジンと選定の背景を調べてみました。

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選定条件とSteam評価について

今回は、Steamで「非常に好評」以上の評価を得ており、レビュー数が500件以上ある作品を選びました。

Steamの評価やレビュー数は日々変わります。また、表示言語や購入方法によって件数が変わります。この記事では、評価ラベルはSteamストアに表示される全期間の評価を確認し、レビュー数はレビュー欄のフィルターを「すべて」「すべての言語」「購入方法すべて」にしたときの件数で確認する方針です。

※レビュー数は変動するため、本文では固定値を掲載していません。

エンジン別に見る10タイトル一覧

タイトル使用エンジン系統
Vampire SurvivorsPhaser(JS)→2023年Unityへ移行サバイバー系
Risk of Rain 2Unity3Dサバイバー系
Cult of the LambUnityシム+ダンジョン探索
Gunfire RebornUnityFPSローグライト
HadesSupergiant独自エンジン(C/C++、The Forge利用)ナラティブローグライト
The Binding of Isaac: RebirthNicalisの独自C++フレームワーク「KAGE」見下ろし型ダンジョン探索
BrotatoGodotサバイバー系
BalatroLÖVE(Lua)デッキ構築
Slay the SpirelibGDXデッキ構築
Dead CellsHeaps(Haxeベースのオープンソースエンジン)メトロイドヴァニア

内訳はUnity系が4本、独自エンジン系が2本、Godot系が1本、その他のフレームワーク/エンジン系が3本です。「ローグライクの人気タイトル=Unity製」というイメージだけでは説明できない多様さが見えてきます。

なお、続編のSlay the Spire 2など、この一覧に入っていない作品については、本文中で補足として触れます。

独自エンジン、2つの物語

なぜあえて既存の汎用エンジンを使わず、自分たちのエンジンを持つ道を選んだのでしょうか。2つの事例を見ていきます。

Hades — C#のランタイムから、C/C++の新エンジンへ

Supergiant Gamesの『Hades』は、The Forgeという公式の説明をもとにすると、次のような経緯をたどっています。

  • 以前のランタイムはC#で書かれており、スタジオにとって継続的な課題になっていた
  • 2019年初頭に、The Forgeのチームが、The Forgeを使ったクロスプラットフォーム対応のC/C++新エンジンを一から作ることを提案した
  • 開発は2019年4月に始まり、新エンジンの最初のバージョンは2020年5月に完成した
  • Hadesは2018年12月にPCで早期アクセスを開始し、2020年9月17日に正式版を発売、同日にNintendo Switch版も発売した

つまり、Hadesは「エンジンを丸ごと自作した」というより、The Forgeというクロスプラットフォームのフレームワークを土台にして、自分たち用のエンジンを組み上げた例です。

The Binding of Isaac: Rebirth — Flashを離れたC++フレームワーク

初代『The Binding of Isaac』(2011年)はFlash製でした。『Rebirth』では、開発に参加したプログラマーSimon Parzer氏の公開記録によると、Flash版のコードをNicalisの独自クロスプラットフォームC++フレームワーク「KAGE」へ移植しています。

Flashの制約を離れ、複数のプラットフォームへ展開しやすい技術基盤へ作り直した例です。

独自エンジンの代償

独自エンジンには、相応の負担も伴います。既存の汎用エンジンなら用意されている機能や開発ツールを、自分たちで整備して統合しなければならず、その分だけ開発の手間が増えます。不具合が起きたときに、コミュニティのノウハウに頼りにくいことも、負担になりやすい点です。

The Forgeの説明では、新エンジンの開発は2019年4月に始まり、最初のバージョンが2020年5月に完成しています。大規模な書き換えを現実にできる体制があってこその選択だったと言えそうです。

軽量なフレームワークやオープンソースエンジンという選択

独自エンジンと大手の汎用エンジンの中間にあたる選択肢もあります。

Dead Cells — Heaps(Haxe)

Dead Cellsが使うHeapsは、Haxe言語をベースにした、2Dと3Dの描画、サウンド、入力、リソース管理を備えたオープンソースのエンジンです。Motion Twin専用の独自エンジンではなく、公開されている技術です。Heapsの公式ドキュメントによると、この技術群は最初からオープンソースで、中心的な開発者はMotion Twinに長く在籍した人物でもあります。

Balatro — LÖVE(Lua)

BalatroはLuaで書くための軽量なフレームワークLÖVEで作られています。

Slay the Spire — libGDX

初代Slay the SpireはlibGDXで作られています。libGDXは、Javaで書くためのゲーム開発ライブラリです。

この3本に共通するのは、UnityやUnreal Engineのような統合型ゲームエンジンではなく、比較的コード中心の技術を選んでいる点です。

汎用ゲームエンジンを選ぶ理由 — メリットとリスクの両面

メリット: 広く使われていること、そして無料のGodot

Unity系4タイトル(Risk of Rain 2、Cult of the Lamb、Gunfire Reborn、そして途中からUnityへ移行したVampire Survivors)に共通するのは、広く使われている汎用エンジンであるため、情報やツールが豊富で、複数のプラットフォームに展開しやすいことです。

GodotのBrotatoは、無料のオープンソースエンジンで人気作を生み出した好例と言えます。

リスク: ベンダーの規約変更

一方で、汎用エンジンの提供元が料金や規約を変えるリスクもあります。象徴的なのが、2023年のUnityの料金方針(Runtime Fee)をめぐる騒動です。

  • Cult of the Lambの開発元Massive Monsterは、新しい課金が始まる1月1日にゲームを「削除する」とSNSで投稿し、「今のうちに買ってほしい」と呼びかけました。これは料金方針への強い抗議の意味を持つ投稿で、実際にゲームが削除されたわけではありません
  • 続編の『Slay the Spire 2』は、もともとUnityで開発されていましたが、Mega CritはUnityの料金方針を批判し、最終的にGodotへ移行しました。同社によると、移行を検討した理由は複数あり、Godotで短期の試作も行っています

どちらも、エンジンの提供元の方針が、開発者の判断を大きく左右しうることを示しています。なお、Unityは2024年9月12日、ゲーム向けRuntime Feeの撤回を発表しました。Unityの撤回発表。

実際に学び始めるなら

ここからは学習導線です。記事で紹介した作品と同じエンジンを自分でも触ってみたい場合、動画講座で画面を見ながら進める方法もあります。

  • Unityを学ぶ: Risk of Rain 2、Cult of the Lamb、Gunfire Rebornなど、今回の10作品でも複数の採用例があります。

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  • Godotを学ぶ: Brotatoで採用され、Slay the Spire 2でも技術基盤として選ばれたオープンソースのゲームエンジンです。

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個人開発者への示唆

ここまで見てきたように、Steamで高い評価を得ている人気タイトルであっても、エンジン選びに正解はありません。

  • 既存の技術資産や体制を活かせるなら、独自エンジンという選択肢もある(ただし相応の負担は覚悟する必要がある)
  • 軽量なフレームワークやオープンソースのエンジンで、高い評価を得た商用ゲームを作った例もある
  • 汎用エンジンは便利だが、提供元の規約変更に左右されるリスクもある
  • 実際に、開発の途中や続編で技術基盤を変えた例もある(Vampire SurvivorsのUnity移行、Slay the Spire 2のGodot移行)

「エンジン選びで迷っている」という個人開発者の方は、今回挙げたような実例を知ることで、自分のプロジェクトの規模や目的に合った選択肢を見極めるヒントになるはずです。


※使用エンジンは、公式発表、開発元の公開資料、報道記事をもとにまとめています。公開前に最新の情報をご確認ください。

参考資料

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