この記事は、Steamで高く評価されているゲームの「使用エンジン」をジャンル別に調べる企画の一つです。
はじめに
パズルには、アイデアを中心に、個人や少人数のチームが手がけた作品もあります。制作には問題の設計や検証など、作品に応じた作業が必要です。1人で作られた作品や、学生のグループが作ったプロトタイプから生まれた作品も、Steamで高く評価されています。
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選び方
Steam上のレビューを集計するサイトSteam250(Steamストアの評価ラベルとは別の、第三者による集計)を使い、2026年10月23日時点で、全言語のレビューが500件以上、かつ好評率が93%以上のタイトルを対象にしました。puzzle、puzzle_platformer(パズルを解きながら進む、横スクロールなどのゲーム)、logic の3つのタグのページから、筆者が18本を選んでいます。この基準を満たす作品は他にもあり、18本が全体の統計ではありません。
- 除外したもの: 大手パブリッシャーのタイトル、大規模スタジオの作品、これまでの記事で扱った作品、同じ開発元の続編(続編は補足として触れます)
- 例外として入れたもの: Playdead(INSIDE)、Croteam(約40人、The Talos Principle)、Frozenbyte(Trine 2)は、個人というより中小規模のスタジオです
用語
- ゲームエンジン: 描画、物理演算、音、入力など、ゲームに共通する部分をまとめて提供する開発用ソフトです
- 汎用エンジン / 自作エンジン: Unityのように、誰でも使える既製のものが汎用です。開発者自身が、そのゲーム向けに作った土台が自作です
- 制作ツール: コードをほとんど書かずにゲームを作れるソフトで、Multimedia Fusion 2はClickteam社のものです
調べた結果(先にまとめ)
筆者が選んだ18タイトルのうち、Unityは11本(うちHelltakerの1本は一次情報未確認)、開発者自身が作ったエンジンや自社エンジンは5本でした。残りは、制作ツールのMultimedia Fusion 2が1本、Unreal Engine 3が1本です。自作から汎用エンジンへ移った例も、いくつか見つかりました。
エンジン別に見る18タイトル一覧
| タイトル | 開発元 | 使用エンジン |
|---|---|---|
| Mini Metro | Dinosaur Polo Club | Unity |
| Gorogoa | Buried Signal | Unity(当初は自作のJava製エンジン) |
| Superliminal | Pillow Castle | Unity |
| Viewfinder | Sad Owl Studios | Unity |
| Manifold Garden | William Chyr Studio | Unity |
| Patrick’s Parabox | Patrick Traynor | Unity |
| Keep Talking and Nobody Explodes | Steel Crate Games | Unity |
| Dorfromantik | Toukana Interactive | Unity(開発者インタビューで確認) |
| Helltaker | vanripper | Unityとされる(一次情報は未確認) |
| INSIDE | Playdead | Unity |
| GRIS | Nomada Studio | Unity |
| Baba Is You | Hempuli | Multimedia Fusion 2 + Lua |
| Opus Magnum | Zachtronics | 自作(C#、SDL、DirectX/OpenGL) |
| shapez | tobspr Games | 自作(JavaScript製) |
| The Talos Principle | Croteam | Serious Engine(自社) |
| Trine 2: Complete Story | Frozenbyte | 社内エンジン |
| ANIMAL WELL | Billy Basso | 自作 |
| Antichamber | Alexander Bruce | Unreal Engine 3 |
Unity組 — 11本(うち1本は一次情報未確認)、規模はさまざま
1人から数人のチーム
- Mini Metro: ニュージーランドの2人のスタジオの作品です。Wikipediaに「Unityを使って開発することにした」とあります
- Patrick’s Parabox: Patrick Traynor氏の作品で、Wikipediaに「Unityで開発された」と書かれています
- Keep Talking and Nobody Explodes: 2014年のGlobal Game Jamで、手元にあったOculus Riftの開発キットを使って作られたのが始まりです。エンジンはUnityです
- Dorfromantik: HTW Berlinの修士課程の学生4人が作りました。Game Developerのインタビューで、開発者が「Unityを使って開発した」と語っています。同じ記事によると、その学期に10個以上のプロトタイプ(試作品)を作り、その一つがDorfromantikでした。最初の試作はLudum Dare(短期間でゲームを作るイベント、ゲームジャムの一つ)の2020年4月末の回で生まれ、Wikipediaでは、核となる仕組みを2日間で作ったと説明されています
- Helltaker: vanripper氏が1人で約1年かけて作った無料のゲームです。Wikipediaの基本情報欄にはUnityと書かれていますが、出典の確認が必要というタグが付いたままです。有志によるSwitch移植版の更新記録にはUnity 2019.4でビルドしたとあり、Unityと矛盾はしませんが、開発者本人による一次情報ではありません
中規模までのスタジオ
- Superliminal: 6人のチーム(Pillow Castle)で作られ、Wikipediaには、拡大縮小の仕組みを「Unityで」簡単に実現できたと書かれています
- Viewfinder: Sad Owl Studiosの作品です。Wikipediaの基本情報欄にUnityと書かれています
- Manifold Garden: 彫刻家出身のWilliam Chyr氏が2012年に着手し、最初の約3年は1人で開発しました。エンジンはUnityです
- INSIDE: Playdeadの作品で、Wikipediaに「開発を簡単にするために、チームはUnityに切り替えた」とあります。何から切り替えたのかは、確認できた資料に書かれていません
- GRIS: バルセロナのNomada Studioの作品で、発売元はDevolver Digitalです。エンジンはUnityです
自作から、Unityへ移った例 — Gorogoa
Gorogoaは、Jason Roberts氏が1人で開発した作品で、発売元はAnnapurna Interactiveです。Wikipediaによると、もともとはRoberts氏がJavaで作った自作のエンジンで書かれ、最終的に、Wholesale AlgorithmsがUnityに移植しました。
自作・自社エンジン組 — 5本
Opus Magnum
Game Developerの記事によると、エンジンはC#で書かれ、SDL(画面表示や入力を扱う軽量なライブラリ)と、DirectXまたはOpenGL(描画のための仕組み)を使っています。アートはPhotoshopとFlashで描かれたとのことです。
shapez
GitHubのREADMEには、「独自のエンジンで、YORG.io 3というゲームのエンジンがもとになっている」と書かれています。コードの大半はJavaScriptで、ブラウザで動かせるデモも公開されています。
続編のshapez 2は、Wikipediaによると、Unityで作られています。
The Talos Principle — Serious EngineからUnreal Engineへ
Croteamの初代は、自社のSerious Engineで作られました。Croteamの技術一覧では3.5とされる一方、当時の開発者取材では4と呼ばれており、資料によって版番号が異なります。続編のThe Talos Principle 2は、Unreal Engine 4を経て、Unreal Engine 5で作られています。Unreal Engine公式の開発者インタビューで、プログラマーのGoran Adrinek氏は、Serious Sam 4の後にエンジンの改良費用を見積もったところ、当時のUnreal Engine 4がすでに提供していた品質にも届かないとわかったと述べています。Unreal Engine 5のNaniteとLumenを見て、自社エンジンの開発の終わりだと感じたとも語り、移行は「恒久的な移行」だと明言しています。
Trine 2
Frozenbyteの社内エンジンで開発されています。PC Games Hardwareのインタビューでは、シニアグラフィックスプログラマーのJuha Hiekkamäki氏が、自分たちで開発したエンジンを使っていて、特に名前は付けていないと答えています。別の資料(Wikipedia)には、Storm3Dという名前も見られます。GamingOnLinuxのインタビューでは、プログラマーのJukka Kokkonen氏が、Trine 2ではエンジンを大幅に書き直したと述べています。
ANIMAL WELL
Billy Basso氏が1人で作った作品です。Software Engineering Dailyのインタビュー(書き起こし)で、Basso氏は、Visual Studioの空のプロジェクトから始めて、レベルエディターも自分で作ったと述べています。プログラミングは「ほとんどすべてをCとC++で書いている」とのことです。ゲームプレイのコードはDLL(あとから差し替えられるプログラムの部品)にまとめ、ゲームを動かしたまま再コンパイルできるそうです。Unityを使わなかった理由は、「作るのが楽しかったから」と語っています。
制作ツール組 — Baba Is You
Baba Is Youは、フィンランドの開発者Hempuli(Arvi Teikari)氏が1人で作った作品です。Wikipediaによると、Multimedia Fusion 2と、Luaというスクリプト言語(ゲームの動きを書くための軽い言語)のプラグインで開発されました。友人のLukas Meller氏が、Luaの実装を手伝っています。
ホラー編に登場したFive Nights at Freddy’sも、同じClickteam社の制作ツール(Fusion 2.5)の系統です。
Unreal Engine組 — Antichamber
Antichamberは、Alexander Bruce氏が1人で開発した作品で、Wikipediaには「UnrealScript(Unreal Engine向けのスクリプト言語)とUnreal Engine 3で開発した」とあります。ありえない空間が生まれたのは、コーディングのミスがきっかけで、本人はそれを「初歩的な間違い(rookie error)」と呼んでいるそうです。
このジャンルから見えてくること
18本の範囲で言えることは、次のとおりです。他のジャンルとの数字の比較は、していません。
- Unityは過半数。 1人の作品から6人のチーム、中規模のスタジオまで使われている
- 自作・自社エンジンは5本。 Opus Magnum、shapez、Animal Wellのように、個人が自作した作品もある
- 自作・自社から、汎用エンジンへ移った例が見つかった。 Gorogoa(Javaの自作からUnity)、shapez 2(Unity)、The Talos Principle 2(Unreal Engine 5)。後の2つは、18本の外の続編。ローグライク/ローグライト編では、Unityから別のエンジンへ移った例(Slay the Spire 2など)を紹介したので、移る向きは作品によって違うと言えそうです
- 制作ツールで作られた作品もある。 Baba Is Youは、Multimedia Fusion 2で作られている
実際に学び始めるなら
ここからは学習導線です。記事で紹介した作品と同じエンジンを自分でも触ってみたい場合、動画講座で画面を見ながら進める方法もあります。
- Unityを学ぶ: 今回の18作品では最多の11作品で使われています。2D・3Dの両方に対応し、パズルやパズルプラットフォーマーでも幅広い採用例があります。
- Unreal Engineを学ぶ: 今回の一覧ではAntichamberがUnreal Engine 3を使用しています。3D空間や視覚表現を重視したパズルを作りたい場合の候補になります。
※自作エンジンは、今回のOpus Magnum、shapez、ANIMAL WELLのように高く評価された例がありますが、最初の1本から選ぶ必要はありません。まずは既存のエンジンで小さく試す方法も現実的です。
※リンク先の講座内容・価格・セール状況は変わる場合があります。受講前に最新情報をご確認ください。
個人開発者への示唆
ここからは筆者の見解です。パズルは、Unityのような汎用エンジンで素早く作る道と、自分の仕組みに合わせてエンジンまで作る道の両方に、高く評価された例があるように見えます。ただし、自作で成功した例は、今回の18本から見えた範囲の話で、一般論ではありません。
Dorfromantikのように、ゲームジャムで作った小さな試作が製品になった例もあります。エンジン選びで迷うときは、まず小さく作って試すのも一つの方法です。
※使用エンジンは、Wikipedia、Game Developerの記事、GitHubのREADME、GamingOnLinuxのインタビュー、Software Engineering Dailyの番組紹介などをもとにまとめています。Helltakerは一次情報が未確認です。Steamの評価とレビュー数は、2026年10月23日時点で、全期間・全言語を対象にしたSteam250の集計を使用しています。公開前に最新の情報をご確認ください。
参考資料
- Steam250: Puzzle
- Steam250: Puzzle Platformer
- Steam250: Logic
- Wikipedia: Baba Is You
- Wikipedia: Dorfromantik
- Game Developer: Sparking joy through tile placement in idyllic village builder Dorfromantik
- Wikipedia: Mini Metro
- Wikipedia: Gorogoa
- Wikipedia: Superliminal
- Wikipedia: Viewfinder
- Wikipedia: Manifold Garden
- Wikipedia: Patrick’s Parabox
- Wikipedia: Shapez 2
- GitHub mirror: tobspr shapez.io README
- Game Developer: Road to the IGF, Zachtronics’ Opus Magnum
- Wikipedia: Keep Talking and Nobody Explodes
- Wikipedia: Croteam
- Wikipedia: Antichamber
- Wikipedia: Helltaker
- GameBrew: Helltaker Switch
- Wikipedia: Inside
- Wikipedia: Gris
- Wikipedia: Trine 2
- Wikipedia: Frozenbyte
- GamingOnLinux: Cheese talks to Frozenbyte
- Unreal Engine: Inside Croteam’s transition from in-house tech to UE5 for The Talos Principle 2
- PC Games Hardware: Trine 2 Technik-Interview mit Frozenbyte
- Software Engineering Daily: Animal Well with Billy Basso(書き起こし)
- Game Developer: Creature feature: The surreal pixel art and animation of Animal Well
