はじめに
物語や謎解きで魅せるゲームは、個人や少人数のチームでも挑戦しやすいジャンルの一つです。3Dの豪華なグラフィックがなくても、脚本、演出、アイデアで勝負しやすいからです。
この記事は、Steamで高く評価されているゲームの「使用エンジン」をジャンル別に調べる企画の一つです。
そこで今回は、Steamで高い評価を得ているミステリー/アドベンチャー/ビジュアルノベル系から、個人〜中小規模のスタジオが開発した作品を中心に14タイトルを選び、使用エンジンを調べました。選定の基準は、2026年10月23日時点で、Steam上のレビューを集計するサイトSteam250の数値で、全言語のレビューが500件以上、かつ好評率が93%以上であることです。
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調べてみると、UnityとUnreal Engineに加えて、ビジュアルノベル専用のエンジンや、汎用の制作ツールで作られた、高く評価されている作品が数多く見つかりました。
エンジン別に見る14タイトル一覧
| タイトル | 開発元 | 使用エンジン |
|---|---|---|
| Return of the Obra Dinn | Lucas Pope | Unity |
| Disco Elysium – The Final Cut | ZA/UM | Unity |
| Chants of Sennaar | Rundisc | Unity |
| Outer Wilds | Mobius Digital | Unity |
| The Room | Fireproof Games | Unity |
| Magical Girl Witch Trials | Acacia / Re,AER | Unity |
| What Remains of Edith Finch | Giant Sparrow | Unreal Engine 4 |
| Dispatch | AdHoc Studio | Unreal Engine 4.27 |
| Doki Doki Literature Club! | Team Salvato | Ren’Py |
| Everlasting Summer | Soviet Games | Ren’Py |
| Slay the Princess — The Pristine Cut | Black Tabby Games | Ren’Py |
| Milk inside a bag of milk inside a bag of milk | Nikita Kaf | Ren’Py |
| VA-11 Hall-A | Sukeban Games | GameMaker Studio |
| The Coffin of Andy and Leyley | Nemlei | RPG Maker MV |
内訳は、Unityが6本、Ren’Pyが4本、Unreal Engineが2本、GameMakerが1本、RPG Makerが1本です。
Unity組 — 個人から中堅まで、ミステリーの定番
Return of the Obra Dinn
『Papers, Please』で知られるLucas Pope氏が、一人で作り上げた推理アドベンチャーです。Game Developerの記事によると、Unity 5で作られており、キャラクターの動きを作る部分には、Mayaで書いた独自の仕組みが使われています。
1ビット風のモノクロの見た目については、Wikipediaによると、点の濃淡で陰影を表す表現を3D空間で成立させるために、独自の描画処理が作られました。全画面を1ビットで描くと酔いやすかったため、ぼかしに似た効果を加えて調整しています。Unityという汎用エンジンの上で、独自の工夫を重ねて独特の見た目を作った例です。
Disco Elysium / Chants of Sennaar / Outer Wilds
推理RPGのDisco Elysium、言語の解読を軸にしたChants of Sennaar、宇宙を舞台にした謎解きのOuter Wildsも、Unityで作られています。Disco Elysiumについては、共同開発先The Knights of UのプロジェクトページでもUnity使用が明記されています。ジャンルも規模もばらばらですが、このジャンルで広く使われていることがわかります。Outer Wildsについては、開発者のAlex Beachum氏がGame Developerの記事で、Unity3Dで作ったと語っています。
The Room
パズルアドベンチャーのThe Roomは、Wikipediaによると、Unityで開発されました。
Magical Girl Witch Trials
日本のシナリオ制作会社Re,AERと、そのブランドであるAcaciaが開発した推理ビジュアルノベルで、Wikipediaにはエンジンとして Unity が記載されています。ビジュアルノベルでも、Unityを選ぶ例があることを示しています。
Unreal Engine組 — 物語中心のゲームでも
What Remains of Edith Finch
Wikipediaでは、エンジンとしてUnreal Engine 4が記載されています。家族の物語を断片的に体験していく作品で、凝った演出をUnrealで実現しています。
Dispatch
AdHoc Studioの『Dispatch』は、Unreal Engine 4.27で作られています。Creative Bloqの記事によると、開発が2022年に始まっていたため、後からUE5に切り替えるとスケジュールが危うくなると判断し、4.27のまま進めました。一方で、UE5のUIの機能を一部借りて、画面まわりの問題を解決しています。
同じ記事では、Unreal Engineを使って得られた利点として、次の点が紹介されています。
- Blueprintsで、プログラマー以外のデザイナーやUI担当者も機能を作れた
- 試作と遊び心地の確認を素早く繰り返せた
- Sequencerで、複雑な場面のカメラや動きを、アニメーションを作る前に確認できた
- ソースコードに触れるため、エンジンの内部まで原因を調べられた
最新版を使うことよりも、スケジュールを守ることを優先した判断は、小さなチームにとって参考になります。
ビジュアルノベル向けエンジン Ren’Py — 高評価の作品を支える
今回、もっとも目立ったのがこのグループです。
- Doki Doki Literature Club!(Team Salvato)
- Everlasting Summer(Soviet Games)
- Slay the Princess — The Pristine Cut(Black Tabby Games)
- Milk inside a bag of milk inside a bag of milk(Nikita Kaf)
4本とも、ビジュアルノベルの制作を助けるエンジンRen’Pyで作られています。Ren’Pyは、無料で使え、主要部分はMITライセンスです。一部にはLGPLなど別のライセンスが適用されるため、配布時は公式の条件も確認してください。Steam250の2026年10月23日時点の集計では、4本の好評率はいずれも94〜97%でした。
物語やキャラクターが主役のジャンルでは、3Dの描画や物理演算ではなく、文章や画像、音などを組み合わせられるエンジンで、高く評価される作品を作れることを示しています。
汎用の制作ツール — GameMakerとRPG Maker
VA-11 Hall-A
バーテンダーを主役にしたこのADVは、GameMaker Studioで作られています。Wikipediaによると、「たくさんの派手な演出」に向いていることと、他のプラットフォームに移植しやすいことが、選んだ理由として挙げられています。
The Coffin of Andy and Leyley
RPG Maker MVで作られたとされる、ホラー要素のあるADVです。もともとRPG向けの制作ツールですが、独特の物語と表現で、Steamで高い評価を得ています。
このジャンルから見えてくること
ここからは筆者の見解です。14タイトルを並べると、次のような傾向が見えてきます。
- Unityは最多だが、半数にも届かない。 6本がUnity、残りはUnreal、Ren’Py、GameMaker、RPG Makerと、バラエティに富んでいる
- ジャンルに特化した制作ツールが、高く評価される作品を支えている。 Ren’PyやRPG Makerのようなツールは、このジャンルの個人開発者が最初に使う候補になりうる
- エンジンの新しさより、作品に合うかが大切に見える。 Dispatchは最新版のUE5ではなくUE4.27を選び、物語中心の作品の多くは、3Dの高度な機能を使っていない
実際に学び始めるなら
ここからは学習導線です。記事で紹介した作品と同じエンジンを自分でも触ってみたい場合、動画講座で画面を見ながら進める方法もあります。
- Unityを学ぶ: 今回の14作品では最多の6作品で使われています。3Dのミステリーからビジュアルノベルまで幅広く使える汎用エンジンです。
- UdemyでUnity講座を探す
- Unreal Engineを学ぶ: What Remains of Edith FinchやDispatchのように、3D空間や演出を重視する作品で使われています。
- UdemyでUnreal Engine講座を探す
※Ren’Pyは無料で利用でき、公式サイトにドキュメントや導入案内があります。文章主体の作品を作りたい場合は、まず公式情報から試すのも選択肢です。
※リンク先の講座内容・価格・セール状況は変わる場合があります。受講前に最新情報をご確認ください。
個人開発者への示唆
ここからは筆者の見解です。ミステリー/アドベンチャー/ビジュアルノベルは、初心者にとって最初に作りやすいジャンルの一つだと考えています。複雑な物理演算や大規模なマップが要らず、文章、絵、演出で勝負しやすいからです。
エンジン選びでは、「3Dのミステリーを作りたいならUnityやUnreal」「文章主体の作品ならRen’Pyのような専用ツール」というように、作りたい作品に合わせて選ぶのが現実的だと思います。
※使用エンジンは、Wikipedia、Game Developerなどの記事、Everybodywikiの一覧をもとにまとめています。Return of the Obra Dinnについては、Wikipediaの本文に「独自のエンジン」とも読める記述がありますが、Game Developerの記事に従ってUnityとしています。Steamの評価とレビュー数は、2026年10月23日時点で、全期間・全言語を対象にしたSteam250の集計を使用しています。公開前に最新の情報をご確認ください。
参考資料
- Steam250: Mystery
- Steam250: Detective
- Steam250: Visual Novel
- Wikipedia: Return of the Obra Dinn
- Game Developer: The trials and technical triumphs of Obra Dinn
- The Knights of U: Disco Elysium
- Wikipedia: Chants of Sennaar
- Game Developer: Road to the IGF, Alex Beachum’s Outer Wilds
- Wikipedia: The Room
- Wikipedia: Magical Girl Witch Trials
- Wikipedia: What Remains of Edith Finch
- Creative Bloq: How Dispatch was made using Unreal Engine
- Ren’Py公式
- Viridian Software: Slay the Princess
- Everlasting Summer(App Store)
- Wikipedia: Slay the Princess
- Wikipedia: Milk Inside a Bag of Milk Inside a Bag of Milk
- Wikipedia: VA-11 Hall-A
- Wikipedia: The Coffin of Andy and Leyley
