実践ガイド

Developer’s Eye Vol.22 Hollow Knight

It was never stuck or anything. It was always progressing. It’s just the case that we’re a small team, and games take a lot of time.(止まっていたことは一度もない。ずっと前進していた。ただ、少人数のチームだから時間がかかる、というだけだ)──Ari Gibson氏

■ ゲーム概要

Hollow Knight

  • 開発:Team Cherry(Ari Gibson/William Pellen、共同創業者2名。後にプログラマーJack Vineが加入)
  • ジャンル:メトロイドヴァニア(探索型2Dアクション)
  • プレイ時間:メインクリアで約27時間、完全収集で40時間以上
  • 特徴:Kickstarterでの資金調達を経て2017年に発売。世界累計1,500万本以上を売り上げ、続編『Silksong』は2025年9月に発売
  • 採用エンジン:Unity

■ 購入・プレイ環境

販売先リンク
Steam(Hollow Knight)store.steampowered.com
Steam(Hollow Knight: Silksong)Steamストアで配信中
Xbox Games Store(Hollow Knight: Silksong)xbox.com

価格やXbox Game Passの対象作品・対応プランは変動します。購入や加入前に各公式ストアで最新情報を確認してください。

■ 公式PV

Hollow Knight – Release Trailer

■ 開発者が注目した”地図を渡さない”探索設計という面白さ

Hollow Knightは、崩壊した虫たちの王国「ハロウネスト」を探索するメトロイドヴァニアだ。プレイヤーは最初、自分がどこにいるのかを示す地図すら持っておらず、探索を進めて地図製作者Corniferから地図を購入できる。さらにコンパスを入手して装備すれば、地図上に自分の位置を表示できる。この「最初は迷わせる」という設計が、探索そのものの緊張感と発見の喜びを生み出している。

■ その面白さを開発者視点で分解する

① 地図を”買う”仕組みにした理由

地図はゲーム開始時から自動的に手に入るものではなく、各地でNPCのCorniferや店から入手し、羽ペンで探索した地形を更新し、ピンで任意の場所に印を付けることができる。この設計により、プレイヤーは「今どこにいるかわからない」という不安と、「地図が少しずつ埋まっていく」という達成感を同時に味わうことになる。

② 被弾時のノックバックが与える緊張感

Hollow Knightは高難易度で知られ、Steamのタグにも「ソウルライク」「高難易度」が並ぶ。攻撃を受けると大きくノックバックする仕様は、単なる難易度の高さではなく、プレイヤーに常に警戒感を持たせる演出として機能している。

③ Kickstarterのストレッチゴールが結果的に規模を膨らませた経緯

Hollow Knightはもともと小規模な作品として企画されたが、Kickstarterでのストレッチゴール達成により、追加エリアやボスが次々と実装され、最終的な規模が大きく膨らんだ。この経緯は、続編『Silksong』でも形を変えて繰り返されることになる。

④ 続編『Silksong』開発から見える”制御されたスコープ拡大”

『Silksong』は当初、Hollow KnightのDLC(拡張コンテンツ)として企画されていたが、2019年に規模が大きくなりすぎたため単独の続編として発表し直された(Team Cherryの発表より)。長年開発が続けられ、共同創業者のAri Gibson氏はBloombergのインタビューで「止まっていたことは一度もない。ずっと前進していた。ただ、少人数のチームだから時間がかかる、というだけだ」と述べている。Gibson氏はさらに、アイデアを描き続けるうちに「これを描くのをやめないと15年かかってしまう」と気づき、あるタイミングで意図的にスケッチを止めたと明かしている。Edge誌のインタビューでは、この開発スタイルは「controlled scope creep(制御されたスコープ拡大)」と表現されている。Edge誌は、規模を拡大しつつ線を引く開発スタイルとして紹介している。

■ 設計思想の推測(開発者視点)

  • 探索は”教えないこと”ではなく”少しずつ手に入れさせること”で緊張感を作る(地図・道具の段階的な入手)
  • 規模の拡大は無計画に許容するのではなく、あるタイミングで意図的に線を引く(Gibson氏の「スケッチをやめる」判断)
  • 少人数体制を維持することで、意思決定の速さと一貫したビジョンを守る

■ 制作に応用できるポイント

① マップ・探索データの管理方法

STATION OOPSのような2Dアクションで探索要素を取り入れる場合、Godotではエリアごとのマップ情報をResourceとして管理し、「未取得」「取得済み」のフラグをSaveDataに持たせることで、Hollow Knight的な”少しずつ明らかになる地図”を再現できる。

② 被弾フィードバック(ノックバック・演出)の実装ポイント

被弾時のノックバック量や硬直時間は、AnimatedSprite2Dの表示と組み合わせて調整することで、単なる数値ダメージ以上の”手応え”を演出できる。STATION OOPSの攻撃・被弾処理を調整する際の参考になる。

③ 小規模チームでの開発規模のコントロール

Team Cherryが実践した「制御されたスコープ拡大」は、個人〜小規模開発において特に参考になる。新しいアイデアを無制限に取り込むのではなく、「ここでスケッチをやめる」という区切りを意図的に設けることが、開発を完走させる上で重要になる。

■ まとめ:このゲームは”作り手の教材”である

Hollow Knightは、「地図を段階的に手に入れさせることで探索の緊張感を作る」という設計と、「規模の拡大は許容しつつも、どこかで意図的に線を引く」という開発マネジメントの両方を体現したタイトルだ。続編Silksongの長年にわたる開発は、スコープ管理の難しさと、それでも完走させるための判断基準を具体的に示してくれる。STATION OOPSのような個人〜小規模開発のプロジェクトでも、”どこまでやるか”を決める判断軸として参考にできる。

■ 参考文献


Hollow Knight / Hollow Knight: Silksong © Team Cherry. 本記事の開発者コメントは公開済みインタビュー記事を要約・引用したものであり、記載URLよりご確認いただけます。

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