密室と制限時間は、プレイヤーに”逃げ場のなさ”を与えるための装置である。
■ ゲーム概要
ZERO ESCAPE(極限脱出)シリーズ
- 開発:チュンソフト/スパイク・チュンソフト(ディレクション・シナリオ:打越鋼太郎)
- ジャンル:脱出×推理アドベンチャー
- プレイ時間:作品や遊び方によって異なる
- 特徴:密室・制限時間・複数エンディングという極限設定のもと、脱出ゲームパートと推理アドベンチャーパートを組み合わせた3部作。第1作『9時間9人9の扉』(2009年)から第3作『刻のジレンマ』(2016年)まで打越鋼太郎氏が一貫してディレクション・シナリオを担当
- 採用エンジン:非公開(各プラットフォーム移植は複数の開発会社が担当しており、統一エンジンの情報は確認できなかった)
■ 購入・プレイ環境
| 販売先 | リンク |
|---|---|
| Steam(Zero Escape: The Nonary Games/999+VLR収録) | store.steampowered.com |
| Steam(Zero Escape: Zero Time Dilemma/刻のジレンマ) | store.steampowered.com |
| Xbox Games Store(ZERO ESCAPE 刻のジレンマ) | xbox.com |
販売価格やXbox Game Passの対象作品・対応プランは変動します。購入や加入の前に各公式ストアの最新情報を確認してください。
■ 公式PV
PS Vita/3DS『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』キャラクタートレーラー
■ 開発者が注目した”密室×分岐”という面白さ
『ZERO ESCAPE』(国内旧題:極限脱出)シリーズは、限られた状況に置かれた複数の人物が、脱出や課題の達成を迫られる設定のアドベンチャーゲームである。ゲームは大きく2つのパートに分かれている。1つは室内をくまなく探索し、アイテムを組み合わせて謎を解く「脱出ゲームパート」。もう1つは登場人物同士の情報共有によって物語が進行する「アドベンチャーパート」だ(Game Watch「アドベンチャー界の旗手 打越鋼太郎氏の作家性にフォーカス」より)。すでにジャンルとして確立している2つの遊び──脱出ゲームと推理アドベンチャー──をあえて組み合わせることで、単体の脱出ゲームでは得にくい”物語の緊張感”と、単体の推理ADVでは得にくい”手を動かして解く達成感”を両立させている。
■ その面白さを開発者視点で分解する
① 探索と物語の役割を整理する
脱出ゲームパートでは仕掛けを解き、アドベンチャーパートでは会話や物語が進むことが多い。ただし探索中にも会話や状況説明があり、それぞれの役割は重なる。複数の遊びを組み合わせる際、それぞれで何を体験させたいか整理すると設計の助けになる。
② 分岐を情報の出し方を制御する手段として捉える
プレイヤーの選択によってルートが分岐し、ステージ構成や物語の展開・結末が変化していく(極限脱出シリーズ – Wikipediaより)という構造は、情報の出し方を制御する手段としても捉えられる。各ルートで情報を集め、全体像に近づく構成と考えられる。
③ シリーズのリニューアルにあたり、あえて仕様を変える判断
シリーズ3作目『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』の開発では、タイトルから「極限脱出」という言葉を意図的に外すなど、リニューアルを意識した判断がいくつも行われている。打越鋼太郎氏は4Gamerのインタビューで、脱出を目的としないステージを新たに加えたことがその理由の一つだと説明している(4Gamer.net「なぜ打越鋼太郎氏は『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』で”運命の理不尽さ”を描いたのか」より)。キャラクターデザイナーの交代なども含め、シリーズものであっても続編ごとに”変える部分”を意図的に選んでいることがわかる。
④ 同ジャンルの他の作り手との対談から見える設計思想
スパイク・チュンソフトは2017年、打越鋼太郎氏と『ダンガンロンパ』シリーズの生みの親である小高和剛氏による対談企画「アドベンチャー裁判」を全3回にわたって公開した。この対談では「なぜデスゲームを題材としたのか」「プレイヤーをのめり込ませるキャラクター作り」「ストーリー分岐とマルチエンディングの是非」といったテーマが扱われている(ファミ通.com「なぜデスゲームを題材に? ストーリー分岐とマルチエンディングの是非は?」より)。両氏はともに、極限状況に置かれた複数キャラクターが謎を解きながら生き残りを図る、という近い構造の作品を手がけている。異なる作家性を持つ2人が同じテーマについてどう考えているかを比較できる点で、単独インタビューにはない視点が得られる企画といえる。
■ 設計思想の推測(開発者視点)
- 分岐構造は「選択肢の数」ではなく「情報開示のタイミング」を制御するために存在する
- シリーズを続ける場合でも、前作の仕様をそのまま踏襲せず、あえて変える部分を選ぶ
- 探索と対話でそれぞれ何を体験させたいか整理し、組み合わせを検討する
■ 制作に応用できるポイント
① 分岐管理を「情報開示テーブル」として設計する
分岐シナリオをUnity・Godot等で実装する場合、単純な選択肢分岐ツリーではなく、「どのルートでどの情報が開示されるか」を管理する一覧(表形式のデータ)を先に作っておくと、伏線の重複や矛盾を防ぎやすい。プレイヤーの選択そのものより、開示される情報の管理が設計の中心になる。
② 探索パートと会話パートをシーン単位で分離する
Godotであれば、探索パート用シーンと会話パート用シーンを別々に用意し、EventBus的な仕組みで両者をつなぐ設計にすると、役割の混同を防ぎやすい。波無島事件のようなミステリーADVでも、この分離は保守性の面で有効だ。
③ 続編・追加コンテンツでは”変える部分”をリスト化する
シリーズものを作る場合、前作から意図的に変更する要素(キャラクターデザイン、タイトルの言葉選びなど)を企画段階でリスト化しておくと、単なる焼き直しにならずに済む。
■ まとめ:このゲームは”作り手の教材”である
『ZERO ESCAPE』シリーズは、探索と対話の組み合わせや、分岐を情報開示の制御手段として捉える視点を得られるシリーズだ。波無島事件のような分岐のあるミステリーADVを作る際、「選択肢を増やす」ことと「伏線を意味のある形で回収する」ことは必ずしも同じ方向を向かない。この設計は、分岐を情報開示のコントロール手段として捉える視点を提供してくれる。
■ 参考文献
- Game Watch「アドベンチャー界の旗手 打越鋼太郎氏の作家性にフォーカス」
- 4Gamer.net「なぜ打越鋼太郎氏は,『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』で”運命の理不尽さ”を描いたのか」
- ファミ通.com「なぜデスゲームを題材に? ストーリー分岐とマルチエンディングの是非は?『ZERO ESCAPE』打越鋼太郎氏vs『ダンガンロンパ』小高和剛氏”アドベンチャー裁判”開廷」
- Wikipedia「極限脱出シリーズ」
- Steam「Zero Escape: The Nonary Games」
- Xbox「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」
ZERO ESCAPE / 極限脱出シリーズ © Spike Chunsoft Co., Ltd. 本記事の開発者コメントは公開済みインタビュー記事・対談企画を要約・引用したものであり、記載URLよりご確認いただけます。
